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『サラリーマン山崎シゲル』著者が語る、“違和感”の描き方 「普通の人がおかしな行動をした方が面白い」

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 とある会社の、とあるサラリーマン「山崎シゲル」がどこまでも心が広い「部長」相手に常軌を逸した奇行の数々を繰り広げる異常な日常をシュールな一コマで描いた脱力系1コマママンガ『サラリーマン山崎シゲル』。その最新刊となる『サラリーマン山崎シゲル Love&Peace』(ポニーキャニオン刊)が11月15日に発売された。

 公式 Twitter(@hikaru_illust)のフォロワーは28万人、公式 Instagram(@ yamasaki_shigeru)のフォロワーは14万人を超え、各界の著名人からも支持されている本作の著者・田中光とは一体どんな人物なのか。その創作の源から、最新刊の魅力まで話を聞いた。

「当たり前の日常の中に、違和感のエッセンスを入れる」

——お笑い芸人ではなく、漫画家として大きな成功を収めたことをどう捉えていますか。

田中光(以下、田中):芸人をやっていたときはめちゃくちゃ尖っていました。でも、売れるためには多くの人に面白いと思ってもらわないといけない。いわゆる“万人受け”を目指すために、長い期間努力をしていました。でも、万人受けを狙って書いたわけではない『サラリーマン山崎シゲル』は、ツイッターのフォロワー数が28万人以上(11月15日時点)にもなりました。日本の人口全体で言えば、決して多くはないかもしれないですが、これだけの方たちが支持してくれて、自分の書いた絵を楽しんでくれている。それなら十分じゃないかと。決してメインディッシュにはならないギャグ漫画ではありますが、「あったらいいな」というところを突くことができるものを作り続けられたらと思っています。

——漫画を書き始めたきっかけは?

田中光(以下、田中):芸人になるために東京に出てきたのですが、10年以上売れずにどうしようかと思ったときに、先輩の又吉さん(ピース)から、特技を伸ばしておいた方がいいぞ、と言われて。自分の特技を模索した結果、たどり着いたのが絵でした

——田中さんは芸大に通われていたんですよね。

田中:元々、お笑いをやるか、芸術をやるか迷っていた青春時代でした。結局、芸大に入って版画を彫っていたんですが、お笑いをやるなら若いうちしかできないと考え直し、大学を辞めて、幼馴染とコンビを組んで、吉本興業に入りました。絵を書くのは歳を取ってからでいいや、と思っていたのですが、結果としてこれが仕事になっています。

——絵をネタとして使う芸人の方は多くいますが、田中さんはそれを活かそうとは考えていなかった?

田中:めちゃくちゃ尖っていたんです。漫才が一番格好いいと思っていて、絵には頼らない、言葉だけでいくと。だから大学を辞めてから絵はまったく書いていませんでした。でも、結果として言葉で中々伝えられなかったニュアンスが絵では伝えることができるようになりました。表現方法として自分に合っていたんだなと思います。

——田中さんの一コマ漫画は、あるようでなかった、絶妙な表現が秀逸だと思います。構図やセリフに独特のものがあるのですが、漫画を書くときは言葉が先にあるのか、絵のイメージがあるのか、どちらですか。

田中:映像として思い浮かんだものを絵にしています。考え方は大喜利と一緒で、お題を出されていかに人と違う目線で見ることができるか。いろんな角度から、そのお題を眺めて、考えて、それを絵にしていく形です。

——パッと思いついたものを絵にしていくのではなく、そこにはかなりの検証があると。

田中:そうですね。全然面白くないものからとんでもない発想のものまで、思いついたものを並べてみて、そこから選んでいきます。

『サラリーマン山崎シゲル Love&Peace』より

——『サラリーマン山崎シゲル』は人物のギミックに関してはリアリティがありながら、そこで描かれていることはあまりにも馬鹿馬鹿しい、そのギャップがとても魅力的です。

田中:どちらかと言えば、風景画などの写実的な絵の方を得意にしていたこともあり、それが活かされているのかもしれません。とはいえ、10年ほど絵を書いていなかったので、“ちゃんと書こう”と思って書いても感覚が鈍っているところは否めなくて。

——それが独特の味わいになっているような気もします。

田中:そうですね。『サラリーマン山崎シゲル』(2014年刊行)と、この最新刊『サラリーマン山崎シゲル Love&Peace』で微妙に絵が変化しているのも、その感覚が少しずつ戻ってきたところにあるのかなと。

——『サラリーマン山崎シゲル』の主役、山崎と部長のキャラクターはどうやって?

『サラリーマン山崎シゲル Love&Peace』より

田中:なるべく個性を見た目にもなくそうと思って創り上げました。

——その一方で、山崎の行動はとんでもないという(笑)。

田中:変なキャラクターが登場して、変な行動をする、それは変ではなくて“普通”なんですよね。普通の人がおかしな行動をした方が、面白かったり、恐怖だったりする。

——山崎の突飛な行動が読者に支持されているのも、誰しもが思う「いま、ここで変なことをしたらどうなるだろう」という本能的なものを体現してくれているからなのかと。

田中:山崎と同じ行動を取ったら危ない人になってしまいますけど(笑)。当たり前の日常の中に、違和感のエッセンスを入れたらどうなるか、それを僕自身も楽しみながら書いています。

      

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