木村祐一が語る、芸人という仕事 ドキュメンタリー『ワレワレハワラワレタイ』の狙い

木村祐一『ワレワレハワラワレタイ』を語る

 4月20日~23日に開催された、吉本興業による『島ぜんぶでおーきな祭 第9回沖縄国際映画祭』にて、同映画祭の特色が強く出ていた作品のひとつに、お笑い芸人の木村祐一が監督を務めた『ワレワレハワラワレタイ ウケたら、うれしい。それだけや。』がある。同作は、2012年に吉本興業が創立100周年を迎えたことを記念してスタートした企画で、木村祐一が笑福亭仁鶴から気鋭の若手まで、総勢107名の芸人にインタビューを行うドキュメンタリーだ。

 芸人として生きることを選んだ者たちが、その人生の葛藤や喜びを生の声で語る本作は、笑いとはなにか、芸とはなにか、その本質にまで肉薄する興味深い内容に仕上がっている。2015年の『京都国際映画祭』から、順にその貴重なアーカイヴが公開されてきて、今後も『京都国際映画祭』と『沖縄国際映画祭』で公開されていく見込みだ。

 今回、リアルサウンド映画部で取材した『第9回沖縄国際映画祭』では、笑福亭仁鶴、ガレッジセール、スリムクラブ、今田耕司、東野幸治、ピース、オリエンタルラジオ、ザ・ぽんち、博多華丸・大吉、山口智充、渡辺直美の回が上映された。

 笑福亭仁鶴は、60年代に放送された深夜ラジオ『オーサカ・オールナイト 夜明けまでご一緒に』(ラジオ大阪)の貴重なエピソードが明かし、当時と今では笑いにどんな違いがあるかを考察。ガレッジセールは、沖縄から上京して初舞台を経験したときの体験に触れる。今いくよ・くるよ(今いくよは2015年に逝去)は、女芸人の先駆けとして一時代を築くまでの苦労を語り、ロンドンブーツ1号2号は、それぞれのスタンスの違いや現状の不満を明かす。今田耕司と東野幸治はそれぞれ、木村と昔話に花を咲かせ、ピースは芸人の仕事の醍醐味を語り、オリエンタルラジオは若くして売れたからこその失敗談を赤裸々に話す。それぞれの個性的なエピソードは、そのまま吉本芸人たちの多様さを示しているようだ。そして、すべての芸人に対し、最後に次の質問が投げかけられる。

「生まれ変わっても、あなたは芸人やりますか?」

 これに対する答えもまた様々である。しかし、今回の出演者たちを見る限り、誰一人として後悔しているようには見えず、その回答には深い説得力があった。それだけでも、芸人という仕事の魅力を存分に伝えるドキュメンタリーに仕上がっているといえよう。本ドキュメンタリーを制作したことについて、木村祐一は次のように語る。

「僕自身、普段から舞台に立ったりテレビに出たりして、笑わせることに一生懸命頭を悩ませています。もちろん楽しみながらなんですけれど、やはり生みの苦しみはあって、たとえばバラエティ番組でアドリブをうまく出すにはどうすれば良いかとか、あらゆる方面へのアンテナの張り方とか、常に模索している状況です。それで、他の芸人たちがどれくらい、笑いを取るために苦心しているのかが知りたいと思いました。どんな共通点と相違点があるのか、それぞれの距離を測ることで、改めて芸人という職業に対する理解が深まるのではないかと。それに、総勢107名の芸人にインタビューするのは、吉本の100周年企画としてもふさわしいと思いました」

 実際、インタビューを行う中で見出した芸人たちの共通点については、笑福亭仁鶴が作中で話しているように「お客さんが求めていることで、誰も見つけていないことをやっていくのが重要」との姿勢があったという。あくまでも「芸人はしゃべる商品である」との考え方だ。

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