米ホラー映画『IT/イット』なぜ10代女性にヒット? 映画マーケティング専門家が分析
スティーヴン・キング原作の米ホラー映画『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』が、若年層の観客を中心にスマッシュヒットを記録している。興行通信社が発表した全国映画動員ランキングによると、同作の11月11日~12日の動員数は約17万人、興収2億2500万円と、動員・興収共に先週を2割強上回る数字をあげ2位をキープ。先週1週間の動員ランキングは1位、累計興収は7億2700万円を突破している。
同時期には二宮和也主演の『ラストレシピ -麒麟の舌の記憶-』や、広瀬すず主演の『先生!、、、好きになってもいいですか?』といった作品が公開される中、観客を選ぶホラー作品が上位にランクインし、しかも10代~20代の女性観客を動員しているのは、特筆すべき状況だろう。いったいなぜ『IT/イット』はヒットしたのか? 映画・映像業界に特化した分析サービスを行っているGEM Partners株式会社の代表取締役/CEOの梅津 文氏に、同作ヒットの経緯を聞いた。
「『IT/イット』は公開の直前に、作品認知度や鑑賞意欲度などの興行収入ポテンシャルが“急上昇”した作品です。テレビでの露出もありますが、YouTubeなどのデジタルマーケティングに注力した展開や宣伝の効果と言えそうです。鑑賞意欲度の高さに対して興行収入はさらに高めで、『この作品こそ見たい』という熱量の高さと、ライトな興味を持つ層も含めて話題となったことが、動員の後押しとなりました。
15歳から69歳に向けた調査結果をみると、性年代別のセグメント別では若い男女の意欲度が高く、しかも公開近くに急速に伸びていて、うまく話題度を喚起した例と言えます。公開時点での認知度は女性10代で最も高いです。通常ホラー映画は『見たくない』と答える人も多い、人を選ぶジャンルです。しかし、話題度に火が付き『若者がみんなで見に行く』イベントムービーとなると、数字がはじけることがあります。若い人は複数人でいく場合も多いのですが、ホラーだとなおさら『話題になってるから見たいけど一人で行けない、みんなで見に行こう』となるのかもしれません。過去の事例では、『貞子3D』などのヒットも同じですね」
本作のヒットが象徴するように、ホラー映画は新たな鉱脈となる可能性もあると、同氏は続ける。