日テレ水曜ドラマ、『過保護のカホコ』で快進撃! ヒットの鍵は“ぶっ飛んだヒロイン像”にアリ
水曜ドラマ『過保護のカホコ』(日本テレビ系、22時〜)が好調だ。週刊エンタテインメントビジネス誌『コンフィデンス』が実施した放放送前の下馬評では、9位と決して高くない期待値だったものの、フタを開けてみれば視聴率は順調に2ケタ台をキープ。「今期No1」と目された『コード・ブルー シーズン3』に迫る勢いを見せているほか、番宣用のLINEアカウント“AIカホコ”の登録者数も30万人を突破するなどドラマを超えた話題も生んでいる。
物語はといえば、両親に蝶よ花よと育てられた大学生のカホコが、さまざまな出来事をきっかけに自立しようと奮闘する、いわば成長ドラマ。その中に家族が抱える問題や、画家志望の麦野との恋愛などが織り交ぜられ、コミカルでありながらときに考えさせられる内容が、世代を問わず受けている様子。『女王の教室』や『家政婦のミタ』など、ヒットドラマを数多く手がけてきた遊川和彦の脚本も、“過保護社会”な世相を反映したようなテーマにバチッとハマったようだ。
しかし、それだけではない。本作が放映されている日本テレビ系の水曜22時枠は、近年ヒット作を連発している枠でもある。昨年からのラインナップを遡ってみても、『世界一難しい恋』、『家売るオンナ』、『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』、『東京タラレバ娘』、『母になる』と話題にのぼった作品が目白押し。今年に入ってからの『東京タラレバ娘』、『母になる』はやや評価の分かれるところもあったものの、それでもコンスタントに当てる安定感はさすがと言える。長らく連ドラの代名詞といえば“月9“だったわけだが、ここにきて覇権に揺らぎが起きているのではとも思える。
ではなぜ、水曜ドラマは躍進を遂げたのか。
月9と比較して最も顕著なのはヒロイン像だ。月9の場合、ここ1年ほどの主演を見てみると福山雅治、山田涼介、相葉雅紀、そして今期の山下智久と、男性主人公が続いている。それもアイドル人気のあるジャニーズ勢が多い。物語も、王道ラブストーリーがあればサスペンスも推理物もありと、ジャンルレスに展開。トレンディドラマ全盛期のイメージから、未だ脱却できずにもがいている印象を受ける。
一方、水曜ドラマはというと、『ハケンの品格』や『ホタルノヒカリ』が話題となった10年ほど前から主人公を徐々に女性にシフト。特にここ数年の流れは顕著で、先に挙げた昨年からのラインナップのうち『世界一難しい恋』以外はすべて女性が主人公の作品となっている。また、キャラクター的にもいい意味でぶっ飛んだ主人公が多いのも特徴。『家政婦のミタ』の「頼まれたことは何でもやる」超人、『花咲舞が黙ってない』の「女性版・半沢直樹」とも言える正義漢、『地味にスゴイ! 校閲ガール・河野悦子』の勝気で我が道を行くタイプと、等身大の女性とは一線を画しているものの、その姿から視聴者が憧れや勇気をもらえるような人物が多い。今作のカホコの場合も例外ではない。身の回りのことはすべて親まかせ、初めはひとりで何もできない姿が視聴者をイラつかせる場面もあったが、反面純真で何事にも真正面からぶつかっていくカホコには、歴代ヒロインたちと通じる痛快さがある。
同枠のメインターゲットは20代〜40代の女性。何が彼女たちに刺さるのか、そこを突き詰める中で、ヒロインに的を絞り試行錯誤してきた結果が今に繋がっている。多少自分とかけ離れていても、破天荒でも、魅力的で応援したくなるヒロイン像が支持されることが証明されたわけだ。イケメンだのみの月9と差が開いてしまったのは必然だったようにも思える。