カズキヨネが語る「陰陽師と天狗眼」シリーズ装画の裏側「物悲しい世界の中で寄り添うような空気感を意識しています」

「薄桜鬼」や「緋色の欠片」シリーズ、『神々の悪戯』など女性に大人気のゲームやアニメのキャラクターデザインを手掛けるイラストレーター・原画家のカズキヨネ。繊細かつ優美、そしてどこか妖しい色香を放つ作品は、多くのファンを魅了しつづけてきている。
時に小説の装画も担当するカズキだが、現在5巻まで刊行されている歌峰由子の人気シリーズ「陰陽師と天狗眼」(ことのは文庫)も彼女の手で彩られている。
美貌の公務員陰陽師の宮澤美郷と、熱血フリーランス山伏の狩野怜路のバディが、古より怪異と隣り合わせの町・広島県巴市で起こる様々な怪異を解決していく人気シリーズ作品だ。作中で描かれるキャラクターたちの魅力を余すことなく描きつつ、各巻の物語世界を美麗に表現した思わずジャケ買いしたくなる装画は一体どのようにして生まれるのか? カズキ氏に創作の裏側を訊ねてみた。

本の装画を描くのに大切なポイントは? イラストレーター・ゆうこが語る小説『じんわり深夜の洋食店』装画制作の裏側
イラストレーターのゆうこが新作の装画制作を語る。光や料理へのこだわり、空気感を大切にした構図など、物語に寄り添う創作の裏側が明か…作品を読み終わる頃には、自ずと装画の方向性ができあがる
ーー絵を描くことがお好きだと自認されたり、イラストレーターという職業に興味をもたれたりしたのはいつ頃でしたか?
カズキヨネ(以下、カズキ):小学生の頃から漫画は好きで、クラスメイトに絵を褒められたのをきっかけに、友人たちを登場人物にした冒険漫画をノートに描いては皆に読んでもらっていた記憶があります。そして、その頃から将来は漫画家になりたいと思っていました。
実際真似事で漫画を原稿用紙に描いてみたこともありましたが、漫画って1ページにすごくたくさん絵を描くことに気が付いて。そこから何となくストーリーを描くというより、1枚のイラストを時間をかけて描いていたいと思うようになった気がします。
ーーファンタジー要素のあるイラストレーションを数多く手掛けられていますが、もともとファンタジー作品はお好きだったのでしょうか?
カズキ:想像の余地があったり、現実の理に囚われすぎていないといった点でファンタジー系の方が好きかなというところはあります。
ーーカズキ先生の作品の特徴の一つである「ツノ」は「薄桜鬼」「緋色の欠片」に携わったことで目覚めたそうですが、ほかにもご自身で「こだわり強いな」と感じるものはありますか? やはり度々発言されている筋肉でしょうか?
カズキ:よくご存じですね。筋肉はその都度描いては、己の理解が浅いと感じる果てのないモチーフだと痛感します。
他は服などの布シワ萌えも内包しているので、中に体がちゃんと詰まっている良いシワが描けるよういつも頑張っています……。
ーーこれまでさまざまな小説作品の装画を手掛けられています。装画を描くにあたり、どうやってイメージをふくらませているのでしょうか?
カズキ:装画を描かせていただく作品は、必ず最後まで読ませていただきます。ゲラ刷りをいただけたときはマーカーや付箋を使って、データの場合はコピペでまとめてキャラクター造形の描写シーンや印象に残るシーンをメモして装画のヒントにしています。
読み終わる頃には自然と脳内で構図や色合いなどの方向性も出来上がるので、後は編集さんと著者先生へ提案したのちご相談ですね。
あと初めて描かせていただくレーベルでは他作品の装画を集めてどんな空気感や方向性なのかを確認したりしますので、その過程で所々影響は受けていると思います。
ーー「陰陽師と天狗眼」シリーズの著者である歌峰由子先生は、装画についてあとがきで「これが書店に並んでいたら、内容知らなくても表紙買いしてしまうなあ……!」と書かれていました。読者の方からもらった装画への感想で嬉しかった言葉をあげると何になりますか?
カズキ:世界の生みの親である先生にそう言っていただけるのは本当に光栄です。
作品の元々のファンの方に受け入れてもらえたような感想をいただけるとすごく嬉しいし、まだ知らない方に装画を見て買いましたと言っていただけたときは、嬉しさと同時に仕事の達成感があります。
ーーちなみにカズキ先生は装画に惹かれて本を買ったことはありますか?
カズキ:本の表紙買い、自分はしたことないかなぁと思いましたが一つだけ、森博嗣先生の『スカイクロラ』という小説は空が綺麗だなぁと思って何も知らずに買った記憶があります。
意識しているのは、昼と夜の狭間の少し物悲しい世界の空気感

(著:歌峰由子・装画:カズキヨネ/ことのは文庫)
ーー美貌の公務員陰陽師の美郷と、熱血フリーランス山伏の怜路のバディが主人公の「陰陽師と天狗眼」シリーズ。見た目のタイプも性格も対照的な2人のキャラクターデザインを決めることはすんなりできたでしょうか?
カズキ:歌峰先生の作品はキャラクター描写がハッキリしていたので、特別悩む部分はありませんでした。キャラクター造形に関しては作品の内容に沿うことに注視しますので、視線やポーズ、仕草などに性格や動き、色気などが出るよう心がけています。
怜路は男らしいタイプな分、美郷が女々しすぎることがないように体格部分で気を付けています。
ーー美郷と怜路のどちらのほうが描きやすい、といったことはあったりしますか? 差し支えなければ理由も教えてください。
カズキ:描きやすいのは、顔は美郷で体は多分怜路です。美郷は単純に場数が理由で、耽美系の顔を描き慣れているというところからです。体は多分怜路というのは、まあ筋肉が好きということもありますが、メリハリのある体はそれだけ影が付けやすく描きやすいといった理由があるかなと……。怜路が脱いだところを描いたことがないので多分です(笑)。
ーー作中のどのシーンを装画として描くかは、どのようにして決められているのでしょうか?
カズキ:巻毎にシーンや描写する衣装や小物など指定をいただいた上で、裏表紙では実際自分が作品を読んで印象に残ったシーンを組み合わせて構成しています。
表紙は2人の関係性が見えるような、それでいて視線はキャラクターの先にあるストーリーに向くような感覚で顔の角度や体の向きなど決定しています。
ーー巻を追うごとに美郷と怜路の心の距離感が縮まっていくのも作品の魅力の一つです。2人の距離感も装画を描く際に意識されていたりしますか?
カズキ:巻数ごとの全体的な雰囲気を描いているので、確かに1巻(『陰陽師と天狗眼 ―巴市役所もののけトラブル係―』)と2巻(『陰陽師と天狗眼 ―冬山の隠れ鬼―』)では距離が縮まって見えますね。1巻では2人が出会う前の雰囲気で、2巻は森を彷徨うあたりの雰囲気で描いていたと思います。
ーーどの巻の装画も物語世界の妖しさをしっかりと感じさせつつも、ダークすぎないタッチになっているように感じます。このバランスは、かなり計算しながら決められているのでしょうか?
カズキ:自分の描写技術はまだまだ未熟ですが「陰陽師と天狗眼」は、人には見えない世界を共有できる唯一の存在として2人が在るのが主軸だと思うので、ダークというよりは昼と夜の狭間の少し物悲しい世界の中で寄り添うような空気感を意識しています。
呪術や儀式などの資料は歌峰先生や編集さんから詳細をいただけるので、それを参考にしつつ更に詳しく知りたいときは先生や編集さんに質問するか検索しています。
実際2巻の裏表紙にある紙で作った式神に関しては、歌峰先生が作られたサンプルの写真をいただいた上で、作中の描写に沿って実際に自分で作ってみたものになります。
ーー各巻の装画は一枚絵となっていますが、作品世界の第一印象を決める装画を描かれる際に大切にされていること、心がけていることは何でしょうか?
カズキ:装画は絵だけでは完結せず、タイトルロゴなどのデザインを載せて初めて完成するので、描き込み過ぎずどことなく余白を残すということを大事にしています。
小説の装画って意外と見せられる部分が狭いというか、タイトルロゴや帯、図書コード等で重要なものを描けるスペースがかなり限られてくるので、毎回唸りながら構図を考えています(笑)。その上でキャラクターの顔が置ける範囲は表紙の四分の一ほどになるので、なるべく過去巻で描いた雰囲気と被らないように気を付けています。
ーーこれまでシリーズ1巻分の装画を手掛けられてきましたが、特に思い入れのある装画をあげるとするなら、どれになるでしょうか?
カズキ:一番は5巻(『陰陽師と天狗眼 ―クシナダ異聞・女神の章―』)なんですがちょっと理由は言えないので、次点で4巻(『陰陽師と天狗眼 ―クシナダ異聞・怨鬼の章―』)でしょうか。広島神楽の面や装束など、能楽とは違いパワフルで様々な資料に圧倒されました。歌峰先生の神楽への思いも一際強く、より描写に力がこもった思い出があります。
ーー2巻からは、美郷の体内に棲んでいる「白蛇の妖魔」の白太さんも装画にも登場しています。作中では愛嬌のある存在の白太さんを描く際に気をつけていることは何かありますか?
カズキ:爬虫類が苦手だという方は多い気がするので、できるだけリアル過ぎないような描写になるように気を付けつつ、白太さんは可愛いんだぞ!という気持ちを込めて描いています。
ーー2巻の裏表紙には美郷の弟である克樹の後ろ姿が登場していましたが、美郷と怜路以外に機会があったら描いてみたいキャラクターはいますか?
カズキ:克樹描いてみたいですね! 怜路の育ての親の天狗も描いてみたいです。あと、鉄板焼きのバイト中の怜路もいつか描いてみたいと以前から思っています。

ーーカズキ先生のファンの方々、「陰陽師と天狗眼」シリーズの読者、記事読者へのメッセージをお願いします。
カズキ:「陰陽師と天狗眼」は待望の書籍化ということで、たくさんのファンの方々のご期待に添えるような装画を描けるよう今後も精進を重ねていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします!
■書籍情報
「陰陽師と天狗眼」シリーズ
著者:歌峰由子
装画:カズキヨネ
価格:759円~847円(税込)
出版社:マイクロマガジン社
1~5巻好評発売中!
特設ページ:https://kotonohabunko.jp/special/onmyoji/



























