コムドット・やまと、なぜ本名「鈴木大飛」名義で自己啓発本を刊行? 『命の燃やし方』が支持される理由


チャンネル登録者数412万人を誇る人気YouTuberグループ「コムドット」のやまとが、自身3作目となる『命の燃やし方』(講談社)を2025年8月27日に発売した。前作『アイドル2.0』から3年ぶりとなった本書は、本名の鈴木大飛名義で出版。Amazonのタレント本の売れ筋ランキングで1位を獲得するなど、大きな反響を集めている。
やまとは2020年8月にエッセイ『聖域』を刊行すると、3か月で40万部を超えるベストセラーに。2022年8月発売したエッセイ第2弾『アイドル2.0』ではコムドットが”売れた”戦略を明かし、こちらも当時大きな話題を呼んだ。そんなやまとが今回執筆したのは、エッセイではなく自己啓発本。自分の人生に全力で向き合ってきたやまとが、いかに命を燃やすか(同書では自分らしく全力で生きることの意)、その方法を伝授し、読者に実践してもらうというハウツー本の要素も含んでいるものだ。

特筆すべきは、<すべて読む必要がない>と断言されていること。最初から最後まで読んでもらうことよりも、人生を変えてほしいというやまとの想いが伝わってくる。そして、同書には読者が守るべきルールが設定されているのも特徴だ。そのひとつが、「必ず0章の第1フェーズまでを実践すること」というもの。自分らしく生きるための手引きと言える同書は、なによりも自己理解を重要視している。そのため、0章は「自分らしさの見つけ方」と題し、第1フェーズは自己分析から始まり、その後に全力で生きるためのスキルやマインドセットが紹介されている。
ちなみに同書はこれまでの2冊と異なり、やまとがどのように成功者となったのか、その具体例はほとんど記されていない。その理由についてやまとはYouTubeに投稿した動画で、コムドットを知らない人、知っているけれどもファンではない人など、年齢に関係なくファン以外の人にも本を手にとってもらいたいという思いからと明かしており、その思いは敢えて“コムドット”という看板を使わずに、本名で出版したことにも繋がっている。

読み進めていくと、その内容は過去作や動画でもたびたび触れられ触れられている読書やメモをとる理由を含め、挫折を回避するための目標設定方法、根拠のない雑音をシャットアウトする無視力などは、どの年齢、どんな立場の読者でも共感、納得できるもの。さらに情報が溢れ、AIが進化しているなかでどう生き抜くか、デジタル社会における世代ネイティブ問題といった現代社会ならではの内容など、トップ動画クリエイターならではの視点も面白い。
ただし、核となるのは“自分”について。本のなかに登場する「自分ファースト」という言葉は、一見すると、ワガママや自己中心的といったネガティブなイメージが浮かんでくる言葉だが、命を燃やすために大切なのは、やはり自分。自分自身との約束や自分を満たすことを優先することなど、自分らしく生きるためにいますぐ実践できるものが多い。読者の行動を後押ししてくれるアドバイスの数々が、多くの読者から支持されている理由なのかもしれない。
余談だが、前述のように同書には具体例はほとんどない。しかし、ところどころにはやまとがどのようにコムドットを大きくしてきたか、その戦略を感じさせる箇所は諸々ある。一例を挙げるとするならば、「ハッタリをかませ」に書かれている、自分の限界を突破するために、<根拠がなくても、大口を叩く>という話だ。この話はコムドットを一躍有名にした「全YouTuberに告ぐ、コムドットが通るから道を開けろ」発言を彷彿とさせ、やまとの思考と行動への覚悟を少しだけ垣間見れる、貴重な一文。今回の作品をきっかけにやまとのビジネス手腕に興味を持った方は、過去作を手に取ってみると、違った面白さを感じられるかもしれない。
同書を執筆したやまとこと鈴木大飛は、1998年5月15日生まれの27歳で、社会全体でみたらまだ20代の若者だ。人気YouTuberグループを率いるリーダーであり、会社経営者としても成功を収めているやまとだが、同書の最後には、出生時に母親かやまとのどちらかが命を落とす可能性や、生まれた後に脳に障害が残る可能性があったことを子どもの頃から聞かされてきたというエピソードが明かされている。この経験が年々、やまとが命の重みを意識することに繋がり、だからこそ誰よりも熱く、自分という人間に向き合ってきたのだろう。そんな自分らしい生き方だけでなく、命の重みについてまで考えさせられる『命の燃やし方』は、進学や就職活動に向けて学生が読むのはもちろん、今後の生き方や働き方を考えようとしているすべての社会人にも、繰り返し読む価値がある1冊と言えそうだ。























