専門書検索サービス「丸善リサーチ」 月額3850円で“知”を売る挑戦は今度どうなっていく?

学術・研究書の販売で知られる丸善雄松堂が提供するサブスクリプション型サービス「丸善リサーチ」が、今年ついに会員数7500人を突破した。月額3850円という決して安くはない料金設定にもかかわらず、目標数を達成したことは、出版・書店業界にとって大きなニュースだ。電子書籍や動画配信が氾濫する中、「専門書を探す」という一点に特化したサービスが成立した背景には、学術研究と情報ニーズの変化が見えてくる。
「検索」にこそ価値がある時代
丸善リサーチは、大学や研究機関向けの学術書・専門書を中心にデータベース化し、会員が横断検索できる仕組みだ。単なるカタログではなく、絶版書や海外の専門書、論文引用データまで網羅的に収録し、「探すこと」に徹底的に特化しているのが特徴である。
SNSやECサイトが普及した現在、書籍の購入はクリック一つで済む。だが、専門書に関しては「存在すら知られていない」ことが最大の障壁だった。丸善リサーチはその“発見の壁”を取り払う役割を果たしている。出版ジャーナリストはこう解説する。「情報が溢れる時代だからこそ、“何を探すべきか”を明らかにする検索サービスに価値がある。専門書は一般書以上に情報の粒度が細かく、従来のECでは埋もれてしまっていた。丸善リサーチはその可視化を担い、研究者にとって時間と労力を節約する投資と考えられています」
出版業界が注目する“知のサブスク”
目標会員数7500人の達成は、出版業界にとっても示唆的だ。一般的にサブスクはエンタメ領域──NetflixやSpotify──で成功例が語られるが、「知」を対象にした有料会員制モデルが成立したのは珍しい。出版ジャーナリストは次のように指摘する。「専門書市場は部数的には小さいものの、価格帯が高く、購買層も安定しています。丸善リサーチは“ニッチだが確実に需要がある領域”にフォーカスしたからこそ成立した。出版の未来を考えるうえで、こうした精密なサブスクモデルは一つの方向性を示しています」
さらに、出版社にとってもメリットは大きい。検索から購買への導線が明確になり、書籍のロングテール販売が活性化する。従来は埋もれていた専門書が再評価される可能性が広がるのだ。実際、利用者からは「研究テーマに関連する書籍を一括で把握できる」「大学図書館に所蔵がない書籍を容易に特定できた」といった声が寄せられており、学術インフラとしての定着が進みつつある。月額3850円の料金は、一般の読者にとっては高額に感じられるかもしれない。しかし、研究者や大学院生にとっては、膨大な検索時間を短縮し、見落としていた文献を掘り起こせる点で十分に元が取れるサービスだ。
出版ジャーナリストは最後にこう総括する。「出版業界が直面する課題は“本が売れない”ことではなく、“必要な本が届かない”こと。丸善リサーチはその課題をテクノロジーで解決する試みであり、知識の流通を根本から変える可能性を秘めています」
専門書というニッチな領域に光を当てた丸善リサーチの成功は、「知識のアクセスにお金を払う」という価値観が、少しずつ社会に浸透している証左でもある。出版界にとって、この動きは一時的な話題ではなく、未来のスタンダードとなるかもしれない。























