デュア・リパ、BTS・RM、宇多田ヒカル……アーティストやセレブが「本を推薦」する意義とは?

セレブリティが「本を推薦」する意義

 世界のセレブリティと聞くと、華やかで豪華な暮らしぶりが思い浮かぶかもしれない。しかし、そんなイメージとは一線を画する「ブッククラブ」の活動が、巷で注目を集めている。その昨今の注目事例の一つが、イギリスで活動するシンガーソングライター、デュア・リパが2023年に立ち上げた「Service95 Book Club」だ。彼女が自身で発信するプラットフォーム「Service95」で、毎月一冊の推薦書を紹介し、著者のオンラインインタビューを公開するなど、本にまつわる情報発信をしている。(メイン画像:「Service95 Book Club」より)

 同プロジェクトは、グローバルで多様な声を取り上げることに注力し、小説、ノンフィクションをはじめとした、さまざまな書籍を紹介している。例えば、今年セレクトされたものを見てみると、オーストラリアで起きた殺人裁判を追ったノンフィクション『This House of Grief』、芸術家のジャン・ミシェル・バスキアと恋人の物語を描いた『Widow Basquiat』、ポーランドのLGBTQ+コミュニティを描いた文学『Swimming in the Dark』など。文学賞受賞作から新鋭の作品まで、多種多様で幅広いラインナップとなっている。

Dua Lipa In Conversation With Helen Garner, Author Of This House Of Grief

 こうしたブッククラブの動きは実は彼女に限らず、これまでにもテレビ番組などの企画と連動しながら、さまざまな事例があった。アメリカではオプラ・ウィンフリーのテレビ番組内の一企画「Oprah’s Book Club」は1996年以来、大きな影響力を持っていたし、他にも女優のリース・ウィザースプーンのオンライン上のブッククラブ「Reese’s Book Club」では、女性作家を多く取り上げて、作品映像化の後押しをしてきた。

 セレブリティが本の情報を発信すると、知的・文化的なイメージが醸成され、かつファンと「一緒に読む」という体験によって、根強いコミュニティ意識が生まれる。特に昨今のDua Lipaの事例は、デジタルネイティブ世代としてニュースレターやSNS発信に注力しており、ファンとのコミュニティ意識をより一層強めることに成功している。

 セレブリティによる本の情報発信という観点で、アジアの事例に目を向けてみると、まず思い出されるのはK-POPアーティストの愛読書発信だ。例えば、BTSリーダーのRMは読書家として知られていて、『82年生まれ、キム・ジヨン』、『これからの「正義」の話をしよう』、『あなたを応援する誰か』といった書籍を紹介してきた。特に『アーモンド』は、他メンバーも紹介したことが話題となって、ファンの間で広がり、ベストセラーとなった。

 日本でもアーティストの愛読書が話題になることは多い。読書家として知られる宇多田ヒカルは、歌詞集『宇多田ヒカルの言葉』を刊行した時に関連企画として、推薦書籍を集めた選書企画「宇多田書店」を展開し、夏目漱石や中上健次、オスカー・ワイルドやフィッツジェラルドなどを推薦した。また、米津玄師は自身が愛読する宮沢賢治からの引用を作品に織り込んでいるし、YOASOBIは小説を原作に楽曲を制作することで知られている。

 ファンにとってアーティストの愛読書というのは、その創作や人柄の裏側を知る手がかりとなり、自分と推しとのつながりを深めていく手段にもなる。それがウェブメディアやSNSによって発信・拡散されることによって、より身近なものとなっている今、日本でもブッククラブのような活動が注目されていくかもしれない。

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