「ファミリーマガジン」を謳い100周年ーー雑誌「家の光」が照らす“農家“の暮らしと“協同”の心

■実用娯楽7割、協同学習3割で誌面を作る
――農家のライフスタイル、世代交代といった変化への対応にはどう向き合ってきましたか。
山本:現在の日本では、いわゆる専業農家は1割ほどで、多くは兼業農家です。主たる収入が勤め先だったり、自家消費だけの農業の人もいます。退職後、野菜作りを始めた人が読み始めるケースもあります。「家の光」では広く農業に関わりのある方であれば、読者ターゲットであると考えています。
したがって、「畑の時間」という野菜の作り方を手ほどきした記事など基本を解説した連載が人気ですね。一方で、読者の高齢化が進んでいるのも実感していて、いかに次世代に引き継いでいくのかは課題です。

また、「家の光」の構成要素は、実用娯楽7割、協同学習3割です。これは創刊当時からの方針で、これを守る不文律があります。3割の協同学習の部分も堅苦しく作るのではなく、わかりやすく、自分たちのことだと思ってもらえるようなページに仕立てているのが特徴。イラストを使ったり、漫画にしたりと、手を変え、品を変えながら編集しています。
――取材の際に大切にしていることはありますか。
山本:取材する農家は取材先であり、読者でもあることが多いです。都市の人には「家の光」の知名度は決して高いとはいえませんが、農村での知名度は抜群に高いと自負しています。ありがたいことですが、取材を受ける方の中には、「家の光」に出るのは一生に何度もない貴重な機会であり、地元のテレビ局の取材よりも嬉しいと感じていただける方もいます。
だからこそ、私たちも取材先の方の気持ちを汲みながら、丁寧に取材をするように心がけています。そして、誉れの高い舞台にふさわしいようにしっかりと原稿を仕上げ、きれいな写真で出版します。取材を受けた方が友人に自慢したり、近所に配ったりしてもらえるような、コミュニティの中心になれる雑誌でありたいと思っています。
■丁寧に誌面を作って差別化を図る
――今後の「家の光」が目指す方向性についてお聞かせください。
山本:各社が雑誌のデジタル化の取り組みをしているなかで、「家の光」が少し遅れをとっているのは否めません。それでも、私たちは「あたらしい日日」というWEBメディアを運営していて、食、農、サスティナブルな暮らしなどに関心のある20~40代に向けて情報を出しています。今後は「家の光」と連携させるなど、デジタルの展開も進めていきたいですね。
そんななかでも、紙のよさやページをめくる喜びは残っていくと思います。紙ならではの魅力が伝わる誌面を目指しながら、頑張っていきたいと思います。
結城:オールドメディアの良さは、今後、見直されていくと思うんですよ。「家の光」は料理記事一つ見ても、とても丁寧に作っています。レシピ決定までに料理家の先生と話し合いを重ね、撮影後に試作と試食を行い、編集部内の校正や校閲を何度も通しています。「家の光」で紹介されている料理はちゃんと作れるという信頼感は、ネットとの差別化に繋がるポイントです。
また、手芸のページも、担当者以外の編集者が実際に手順通りに作っているんですよ。ここまで丁寧に作っている雑誌は、今は珍しいのではないでしょうか。

――次世代に向けて、果たすべき役割や伝えていきたい価値はどのようなものでしょうか。
山本:「令和のコメ騒動」などを機に、農業に対して問題意識を持つ人が増えていると感じます。これまで農業やJAに関わってこなかった方や、サスティナブルな生活に関心のある方を取り込んでいける誌面を作っていく必要があると感じております。
――読者の方々、これから「家の光」を手に取る可能性のある方々に向けて、一言メッセージをお願いいたします。
山本:私も兼業農家の長男で、75歳の母が現役のJA女性部員ですから、自然と読者の顔が思い浮かんでくるわけです。母が、この記事を読んでくれるかな……と思いながら編集しています。読者が笑顔になれる記事を作るべく、頑張っていきます。
結城:みなさんに気軽に読んでいただける、家族でお茶の間で楽しく読める、読んでいるうちに協同の心が育まれる、そんな愛される雑誌にしていけたら。協同の心は“誰も排除しないこと”だと思います。その思いを持って誌面作りをしていきたいです。これからも応援よろしくお願いします。




















