nonoc、みずほが歌う「ことのは文庫」の世界ーーイメージソングプロジェクトで楽曲に込めた思いを語る

nonoc、みずほが歌う「ことのは文庫」

「100%の優しい声で」みずほが歌う『おまわりさんと招き猫』イメージソング

――続いて、みずほさんが作られた『おまわりさんと招き猫 夢みる旅の通り道』のイメージソング「生まれてきたこと」について。こちらは既存の楽曲を作品に合わせてアレンジしたとのことですが、そもそも純之介さんはなぜこの曲を選んだのでしょうか。 佐藤純之介:大きく「命」をテーマにした曲というのが、僕的にすごく気に入った部分です。『おまわりさんと招き猫』の世界では「しゃべる猫」のような「あやかし」と人間が共生しているわけですが、大きな括りで言えばどちらも同じ生き物ですし、生きとし生けるものとして、それを1つのテーマでまとめてしまうと面白いなと思ったんです。nonocさんの「たまご」が食卓の狭いところから広がる世界だとしたら、みずほさんにはこの作品を外側から抱きしめるような、大きな包容力がある世界観がいいなと。

――みずほさんは原作を読んだうえで、歌詞を調整されたわけですか?

『おまわりさんと招き猫 夢みる旅の通り道』(植原翠/ことのは文庫)

みずほ:はい。読ませていただいて、そこからもっと作品に沿った歌詞にしたいなと思った時に、すごく日常が浮かんでくるというか、その街に自分がいるような近い距離感を、この作品から感じて。だからこそ、無理に背伸びするわけでもなく、シンプルに私が普段日常を過ごしている中で感じたことをありのまま言葉にしたら、この作品にもマッチするんじゃないかなと思って書きました。

――「あやかし」などが登場する作品のファンタジー性を無理に意識するのではなく、その中で描かれている本質的な部分に焦点を当てたわけですね。読後感の温かい気持ちに寄り添う感じと言いますか。

みずほ:難しくしたくないな、と思ったのが一番かもしれないです。先ほど佐藤さんがおっしゃっていた「作品全体を抱きしめる、包み込む優しさ・温かさ」みたいなものを、本当にありのままの形で作りたいなと。普段皆さんが生きている日常と照らし合わせたような言葉を選ぶと、多分、近く感じてもらえるのかなと思って。

佐藤純之介:それで言うと、この楽曲もアコーディオンが入っているんですよね。僕はなるべく各楽曲のテイストが被らないようにオーダーをしているのですが、お互いが「日常の大事さ」という部分を意識して楽曲を制作した結果、どちらのチームもアコーディオンを選んだのがすごくおもしろいなと思いました。

――みずほさんの中では、どんなサウンドのイメージがありましたか?

nonocだけでなく、みずほにとっても今回のコラボは大きな挑戦の一つとなったようだ。

みずほ:色で表すなら水色とオレンジみたいなイメージでした。明るさと優しさと。この曲はライブでも結構歌っているんですけど、改めて音源にするとなった時に、100%の優しい声で歌おうと思って出来上がりました。

――もともとこの曲を書いた時の気持ちも、それに近かったのですか?

みずほ:この曲は結構前、私がまだ18歳とか19歳になった頃に書いたもので。私は普段、光か闇かで言えば闇をフォーカスするような歌を歌うことが多かったので、逆に明るい歌を作りたいなと思って。自分が生まれてきたこともそうですし、命はみんなそれぞれ持っていて、生まれてきたからこそ出会えた人がいたり、繋がりとか、そういったものに感謝しながら生きていきたいな、という思いで作った曲です。

――家族愛や友達への愛、当たり前すぎて普段は忘れがちな「愛」を思い出させてくれるような楽曲だと感じました。

みずほ:歌詞の中に何回出てくるかわからないくらい「愛」って歌っているんですけど(笑)、愛情は常に感じているけど、その愛を忘れて過ごすことって、結構あると思うんです。改めてこの歌で、誰もが誰かに愛されていて、自分も何かを愛しているということが伝わるといいな、と思って作りました。

――サビのリフレインするメロディも、続いていく日常が表現されているように感じられて、みずほさんが音楽を通して伝えたい思いと、作品がうまくマリアージュしているように思いました。

みずほ:ありがとうございます。私は、ありのままの自分を言葉や音にしていきたいな、というアーティストとしての理想のイメージがあって。これからも親しみやすい言葉とストレートなメロディの楽曲を作っていきたいなと思います。

『そのネイルは内緒のときめき』イメージソングはラウドなギターもポイント

――そしてもう1曲、nonocさんが歌う7月刊行『そのネイルは内緒のときめき』のイメージソング「Primer」についてお伺いします。恋愛も仕事も上手くいかない会社員の月ヶ瀬仁美と、メンズネイリストの怜亜の大人な恋愛ストーリーを描いた作品ですが、どんなイメージで制作を進めたのでしょうか。 nonoc:この作品もいわば日常を描いた作品ではあるのですが、主人公が女の子で、恋愛にせよ仕事にせよ、いろんな環境が一旦節目を迎えるなかで、新たな一歩を踏み出せるかどうか、もう一度自分を見つめ直すようなメッセージがあるなと思いまして。ネイリストさんの「鏡がなくても爪は自分ですぐ見れるから、自分が一番テンションが上がるものにしたらいいんじゃないですか?」というセリフが印象的で、主人公はストレスが溜まると爪を噛んでしまう癖があるのですが、ネイルをしてきれいな爪だと傷つけないようになるし、テンションも上がる。「大人の自愛」と言いますか、自分をまた愛し直すみたいなテーマを感じたので、それを軸に歌詞を書いていきました。

――それが化粧やネイルの下地を意味する「Primer」というタイトルに繋がっているんですね。

『そのネイルは内緒のときめき』(神戸遥真/ことのは文庫)

nonoc:ネイルを剥がすと素の自分が出るわけじゃないですか。でも、ケアしていくことによって、痛んでいたものも保護されて、ちょっとずつ強くなっていく。もともとの自分もあった上で、自分の好きなことを守りながら、新しいステージに進みたい主人公、というイメージを歌詞にしました。

佐藤純一:曲調に関しては、nonocと純之介さんと3人でどんな曲がいいか話した時に、「オルタナティブな曲にしよう」ということになったんですね。ただ、作品としては大人なお話なので、マイナー調にしつつ、僕の中ではKing Gnuや、坂本龍一さんがプロデュースしていた時期の中谷美紀さんの楽曲のイメージで作っていきました。ベースは須藤 優さんに演奏していただいてすごくグルーヴィーですよね。それとかなりラウドなギターが入っているのですが、これは「たまご」と同じで、インナージャーニーの本多(秀)くんに弾いてもらっています。

nonoc:このギターが入ることで、曲のイメージがすごく変わりましたよね。ちょっとストレスを発散している感じというか。

佐藤純一:曲の構成も、「たまご」はAメロ、Bメロ、サビという一般的な構成なのですが、「Primer」はより変則的で、わかりやすくサビに入るのではなく、いつの間にかぬるっとサビになる感じにしていて。アニメタイアップの場合は、わかりやすい展開やキメを求められることが多いので、その意味では新鮮でおもしろかったですね。nonocの歌声もすごくハマっていて。

『そのネイルは内緒のときめき』主人公・仁美の生活スタイルはnonocから見ても憧れる?

nonoc:佐藤さんも私もあまりやってこなかったタイプの楽曲ですよね。

――この「Primer」でも、また新しい面を見せられたわけですね。純之介さん的にはこの曲の印象はいかがですか?

佐藤純之介:実は僕の中で『そのネイルは内緒のときめき』のイメージソングに関しては、最初からnonocさんにお願いしようと思っていた作品なので、すごく大人っぽくてかっこいい楽曲が上がってきて嬉しかったですね。

nonoc:そう言っていただけて私も嬉しいです。主人公がバーに通っている女の子で、間借りしている別のスペースでネイルをしてもらったりとか、なんかいいなって思うんですよね。お酒をたしなみながら、人生をお洒落に楽しむ感じっていうか。私はまだそういうのはできないですけど、すごく素敵。

――せっかくご縁ができたので、nonocさんとみずほさんも、ぜひ一緒にそういう時間も過ごしていただければと。ちなみに、みずほさんは普段お酒を飲みますか?

みずほ:飲まないんですけど、飲んだらめちゃくちゃ強いです。お父さんがお酒強いので、多分お父さんに似ました。

nonoc:うわ、今、飲み比べして絶対に負ける絵が見えました。って、結局、全然お洒落な夜じゃないですね(笑)。

nonoc【左】、みずほ【右】 それぞれ手にはイメージソングを担当した『そのネイルは内緒のときめき』、『極彩色の食卓 ホーム・スイート・ホーム 』、『おまわりさんと招き猫 夢みる旅の通り道』の書籍が

■「ことのは文庫」イメージソングプロジェクト公式HP:https://kotonohabunko.jp/special/imagesong/

nonoc

 「日本一小さな市」として知られる北海道歌志内市出身のアーティスト。7月12日生まれ。
 高校在学中より楽曲投稿アプリで歌声を披露し始め、2018年、映画『Re:ゼロから始める異世界生活 Memory Snow』のイメージソングおよび主題歌のボーカルに抜擢されたことで鮮烈なデビューを飾った。以来、『Re:ゼロ』関連作のみらず、『魔法少女特殊戦あすか』『彼方のアストラ』『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』『スパイ教室』など数々のTVアニメ主題歌やCMソングを担当。

 デビュー5周年となる2024年には、fhánaの佐藤純一が代表を務めるNEW WORLD LINEへ所属。生まれ育った北海道から東京へと拠点を移しアーティストとしての新たなスタートを切った。
 カナダ、台湾、香港、インド、カンボジアなどの海外を含む数多くのイベントに出演する一方で、2023年には北海道電力グループのCMソング”365日の明日”を歌唱、2025年には北海道歌志内市PR大使に任命されるなど、北海道をルーツに持つ彼女ならではの活動も精力的に行っている。

nonoc Official Site & FanClub : https://nonoc.bitfan.id/
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みずほ

 2015年2月、ガールズバンドでソニーよりメジャーデビュー。テレビ東京「NARUTO -ナルト- 疾風伝」エンディングテーマなどを担当し、4枚のシングルと1枚のミニアルバムをリリースし、2017年で解散。
 バンド解散後は独り上京し、路上ライブやライブハウスでの活動を行なっている。
作詞作曲は全て自らが行い、テーマを決めてから1週間程で1コーラスを作り、フルコーラスを仕上げていく。持ち曲は本人も忘れるくらいに多数。

 楽曲は王道的なPOPSで、誰もが耳に馴染むメロディー・コード進行を得意とする。
絶対音感を持っているため、原曲を聞いてから5分以内には「歌ってみた」ができる器用さがあり、ハモは瞬時に重ねられる。

みずほ YouTube CHANNEL:https://www.youtube.com/@CHANNEL-rv2kp
TikTok:https://www.tiktok.com/@mizuho_ssw_day0
Instagram:https://www.instagram.com/mizuho_ssw_dayo/
X:https://x.com/MIZUHO_ssw_dayo

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