手塚治虫、水木しげる……美術館で漫画やアニメの展示会が増加中 若年層を取り込むきっかけとなるか?

 漫画の原画展が、公的な美術館や博物館などで開催される例が増えている。日本は美術館・博物館の件数が世界有数といわれる。漫画、そしてアニメがそういった美術館の新たな観光の目玉となり得るか、注目されている。

 原画展の人気が高く、開催頻度も高いのは漫画の神様・手塚治虫だ。「ガラスの地球を救え」が豊島区立トキワ荘マンガミュージアムで8月2日~11月24日、「手塚治虫展」が東京富士美術館で7月12日~9月15日に開催されている。いずれも手塚治虫の人気漫画の原画が一堂に集まる展示会だ。

 また、「手塚治虫 ブラック・ジャック展」があべのハルカス美術館で9月27日~12月14日まで開催される。『ブラック・ジャック』の原画展は各地を巡回しているが(2025年8月現在は沖縄県立博物館・美術館で開催中)、どこの会場もにぎわっており、手塚作品の最高傑作の普遍的な人気の高さがよくわかる。原画の点数が多いことや、魅力的なグッズが多いことも、ファンを引き付ける要因になっているようだ。

 今年開館したばかりの鳥取県立美術館では、地元出身の水木しげるに注目した「水木しげるの妖怪 百鬼夜行展~お化けたちはこうして生まれた~」が開催中だ。横手市増田まんが美術館で開催されている「おジャ魔女どれみ25周年メモリアル展」のように、一つのアニメシリーズに注目した展示会も人気を集めているようである。

美術館にまったく行かない若者は51.7%

 7月31日、国立アートリサーチセンターが15~25歳の男女1800人に対して行った「若年層における美術館やアート全般に対する意識調査」の公表データによると、「美術館にはまったく行かない」が51.7%となっている。若者の美術館離れというよりも、そもそも美術館で絵画を鑑賞する習慣がない人が少なくないことも、浮き彫りになったといえる。

 一方で、「興味がある・行ってみたい展覧会・イベント」の調査では、「海外の有名な作家や作品に関するもの」が31.1%、次いで「マンガ・アニメ・ゲーム」が29.2%となっていた。漫画やアニメというコンテンツの力を実感できるし、若年層に美術館に足を運んでもらうきっかけとしても最適であることがわかる。

 デジタルにはないアナログの漫画原画の魅力は、スクリーントーンや修正液の跡など、漫画家の創作の様子を実感できる点にある。また、アナログのカラー原稿はどうしても雑誌に掲載される際、色が変わってしまうことが多い。原画なら本来の色を鑑賞することができるというわけだ。

 なお、SNSでもっとも原画展を望む声が多い漫画家は、鳥山明であろう。鳥山の原画展は過去に何度か開催されたことがあるが、今やその人気は世界中に広がっている。大規模な原画展が開催されたら、世界中から来場者があるはずだ。漫画界の至宝といえる鳥山の業績を俯瞰できる展示会を、筆者も一人のファンとして期待せずにはいられない。

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