ライトノベル8月刊は「長いタイトル」続々 短くて逆に気になる『炒飯大脱獄』の内容は?

『炒飯大脱獄』ほか注目のライトノベル

 2025年8月のライトノベルは、長いタイトルから内容の面白さが伝わってくる新シリーズが続々登場。8月1日発売の篠宮夕『高校時代に好きだった元同級生のS級美女が隣に引っ越してきた。義娘とともに。』(角川スニーカー文庫)は、会社員となった主人公の隣人に同級生が娘を連れて引っ越してきたことで始まる新しい日々が描かれる。娘が実子ではなく引き取った少女というところに複雑な事情があるようで、そこから社会を生きる大変さや助け合うことの大切さを感じ取れそう。

 8月1日発売のケンノジ『追放された底辺職「盗賊」はゲーム知識で無双する。一緒に召喚された先生も外れジョブだったけど効率的に成り上がります』(Kラノベブックス)は、高校生の湊と女性教師の青葉が異世界に召喚され、いずれも【盗賊】と【呪術使い】という底辺職だったことから追放されてしまうというストーリー。湊がやり込んでいたゲーム世界に似ていたことから、ゲームの知識を生かして効率良くレベルを上げ、それぞれの能力も使って成り上がっていく。男子生徒と女性教師の関係と異世界での無双ぶりを合わせて楽しめそうだ。

 8月8日発売の左リュウ『悪役ムーブで青春リスタート! 悲劇のヒロインを金と権力で救い出す』(電撃文庫)は、事故で死んだ主人公の九蒸飛一が高校時代にタイムリープして、前の人生で拒絶してしまった同級生の叶宇灰璃を守ろうとして人生をやり直していくストーリー。前の人生では親の権力と財産をバックに悪逆非道を繰り返していたが、別の後継ぎが現れたことで実家から放逐されバイト生活に明け暮れていた。戻った世界ではまだ持っている権力も使って悪役ムーブを見せつつ善を成す飛一が、どのような人生を歩むかに注目だ。

 8月10日発売のあおぞら『平穏を望む剣術名家の悪役貴族~史上最高の魔法の才を持った悪役キャラに転生したので、推しのメイドとの穏やかな生活を送るために最強になる~』(TOブックス)も転生からの脱悪役もの。ゲームの悪役貴族に転生した男は、推しキャラだったクール系のメイドと一緒に暮らせることになって喜んだものの、ゲームと同じ展開なら最後は破滅が待っている。そこで膨大な魔力を使い最強魔法使いを目指すことになるという展開から、世界征服にまで至ってしまうエスカレートを楽しめそう。

 8月12日発売のみょん『仲間を守って死んだら二十年後の同じ世界に生まれ変わった件……でも俺、転生二回目なんだけど?』(GA文庫)は、死んだ主人公のトワが逆に20年後に転生してしまうという設定。そこにはかつての仲間たちが美人エルフや色気に溢れたサキュバスとなっていて少年のトワに迫ってくる。羨ましそうな境遇だが愛も重すぎると苦しくなる。トワはどんな気持ちで2回目の転生を生きていくのか。そして誰を選ぶのか。いろいろ気になるラブコメ&ファンタジーだ。

 8月25日発売の晩夏ノ空『修羅場丸ごと異世界召喚 ~ダンナは『勇者()』、浮気相手は『せいじょ』サマ。『主婦』の私は不要ですね?~1』(MFブックス)は、27歳で夫を持つ会社員のユウが主人公。自宅で旦那の浮気現場を見てしまい、修羅場を繰り広げていたところで異世界へと召喚されてしまい、そこで旦那は『勇者()』、浮気相手は『せいじょ』でユウ自身は『主婦』と判定させる。たいしたスキルではないように見えたユウだったが、剛力の能力も合わせ使って掃除に料理に洗濯などをこなして実力を見せ、魔物討伐にも出て自分の運命を切り開いていく。旦那と浮気相手がどうなったかが妙に気になる。

 短くて意味不明なタイトルながらも凄さだけは伝わってくる新作が、第19回小学館ライトノベル大賞でガガガ賞受賞のえるぼー『炒飯大脱獄』(ガガガ文庫)だ。衣食住のグレードが炒飯で決まるという炒飯の監獄は、1年で1000皿の炒飯を積み上げなければ解放されなかったが、そんな決まりに逆らい脱獄を目指して4人の少女たちが立ち上がった。あらすじを読んでも内容がまったく見えてこないが、読み終えれば炒飯が食べたくなる小説になっていそう。8月20日発売。

 新人賞からの登場では、零真似『サマースコール』(講談社ラノベ文庫)が第18回講談社ラノベ文庫新人賞で佳作を受賞した作品。山の中のミュージアムでオルゴールたちと暮らすコウの前に、人魚病といういずれ身体が泡となって消えてしまう病気に罹った少女が現れた。ユキという名の少女とコウは心を通わすようになっていく。切なさを感じさせつつ儚い愛の尊さを教えてくれて涙を誘う。そんな青春ストーリーとなっていそうだ。

 注目作では、『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』の羊太郎による新シリーズ『だって、私はフリーダム! 魔工士フェイ、古代文明に挑みます』(GCN文庫)が8月20日に発売。由緒正しい武家に生まれ剣の天才少女と呼ばれたフェイが、最強剣士を目指す武者修行を経て帰って来たらなぜか魔導機銃を使うようになっていた。当然のように家から勘当されたフェイは古代技術を極めようと旅に出て、魔導機銃を生み出した古代文明の謎に挑むようになる。考古学のロマンにバトルも乗ったファンタジーだ。

 風呂川ツカサの漫画によって「少年ジャンプ+」で好評連載中の『時間の神様』で原作を手がける中西鼎の新刊が『サクチシノニエ 異端の儀式』(ガガガ文庫)。天涯孤独の身となった川上縫が、児童養護施設に入るため茨城県にある村で暮らすようになってしばらくして、村人たちが進行している「サクチシサマ」を祀る神社へ行くと、前に何度も夢で見てきた少女「芽璃」が現れた。芽璃はかつて村で起きた事件について語り、そこから縫の日常が歪み始める。夏にふさわしい恐怖体験を味わえそう。8月20日発売。

 キャラクター小説では、鉈手璃彩子『後宮の呪術女官』(メディアワークス文庫)が中華風ミステリに呪術を絡めて興味を誘う。皇室で相次ぐ病は呪いが原因だと考えた凡帝国の皇太后が、南方の山岳地帯に住む呪術師を捕らえるよう青年将軍の泰峻に命じた。捕らえられ後宮に連行されたのは珂玲という名の呪術師見習いの少女。1度も呪術に成功したことがないお人好しの彼女が、処刑の運命を逃れ後宮の呪いを解き明かしていく展開を楽しめそうだ。8月25日発売。

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