SHINTANI × ISHIYAが明かす、恐るべき噂の真相「信じるほうも異常やと思うけど、でも信じる人は信じるねんな」

ISHIYA:デマやガセっていうよりも、デフォルメされた話だよね。火のないところに煙は立たないわけで。
SHINTANI:RAPESを始めるちょっと前に、BRUTUSってバンドから「ボーカルがおれへんから、ライブ決まってるぶんだけSHINTANI歌ってくれ」って言われて。それで4回くらいやったのかな? たぶんその印象が強すぎて「RAPESってこんなバンド」みたいな。RAPESが始まるまでに流れた噂とかイメージって、そこから引き継がれてる。
ISHIYA:そのBRUTUSで歌ってたSHINTANIがやったこと?
SHINTANI:うん。曲がわからへんから、どうしよもない。適当に暴れてたらいいんかなと思って適当に暴れてたんやけど。
一一どんな暴れ方をしたんですか?
SHINTANI:いや、人殴ってみたり、モノぶつけてみたり。
ISHIYA:ライブ中に限らず、だったよね。見てる時もやってたでしょ。
SHINTANI:うん。ただ、気ぃつけてたんは、機材壊したら弁償させられるから。お金がないから、機材だけは壊さないでおこうって。
ISHIYA:人間は壊してもいいんだ(笑)。
「別に俺の親ヤクザでも何でもないし、人なんて刺してないし」

SHINTANI:あったんやと思う。ずっとそうやったし。パンクやる前から傷害で捕まってたりしてたわけやから。
一一SHINTANIさんとRAPESについては、都市伝説みたいな噂を聞くわりに、誰に訊ねても「何も知りません!」って言われるんですよ。
ISHIYA:真実じゃないことも多いからね。都市伝説みたいなのも多いし。人から人へ伝えられる時にどんどん話がデカくなっていく。
SHINTANI:歌舞伎町とか行くと半グレみたいな連中おるやんか。ああいう奴らも俺の噂は知ってて。「あっ、SHINTANIさんですよね。一緒に店行っていいですか?」とか言われて。なんで付いて来んねん(笑)。それで「チェーンソーで腕切り落としたんですよね?」「……お前、それほんまやったら世界的なニュースになるで?」みたいな。信じるほうも異常やと思うけど、でも信じる人は信じるねんな。一番最初にアホみたいな嘘ついた人間、探してみたいわ。「お前どんなつもりで言うたんか?」って。
ISHIYA:でも、デフォルメする基本と、元になる話はあるってことだよね。
一一ちょっとの喧嘩が、いつの間にかチェーンソーになっていった。
ISHIYA:「ちょっとの喧嘩」が普通の人の喧嘩とは違うから。周りから見たら「あちゃー!」ってことになる。
一一そうやって話が広がっていくのは嫌じゃなかったですか。
SHINTANI:や、最初は嫌やったけど。でも説明していくのも面倒で。あと、実際やってることのほうが酷い場合もあるし。恥ずかしいやん。「こっちはやってない」とか言っても、もうひとつは実際やってるわけやし。そこ言い訳すんのも格好悪いなと思って。
ISHIYA:そもそも噂の数も多すぎるしね。
一一有名なのは『クイック・ジャパン』襲撃事件です。あることないこと書かれて、殴り込みに行ったという。
SHINTANI:あぁ。だってあれはほとんどが違う話が書かれてたから。
ISHIYA:勝手に作られたんだ?
SHINTANI:こういうことやった、こういうことがあった、みたいな話がほんまにあるのは知ってるねん。誰がやったかも知ってる。でも、記事の一個一個を指して「これは誰がやったやつで、こっちはほんとは誰がやった」なんて言われへんやん。だからもう全否定するしかなかった。実際ない話も多かったから。「親がヤクザで、六本木で人を刺した」とか、別に俺の親ヤクザでも何でもないし、人なんて刺してないし。
ISHIYA:そんな話になってんの? ムチャクチャだね。
SHINTANI:あと「ニューエスト・モデルの中川を吊し上げてどうの」とか。揉めた相手のことは知ってるけどそこまでやってないのも知ってるし、あれは俺、揉めてるのを止めたぐらいやからな。でも、そんなんいちいち言われへん。
ISHIYA:当時は情報もないからね。携帯もないしネットもないし。ライブハウスの客の間だけでどんどん話が広がっていく。だから「マサミさんが手ぇ食っちゃった」とか、そういう話も出てきて。食うわけねぇだろう(笑)。
一一真偽のわからなさが面白かったところもありますね。
SHINTANI:今も言われるよ。「SHINTANIさんって……実在するんですか?」とか(一同笑)。でも別に相手にせぇへん。そんなワケのわからん噂信じて怖がられても、付き合った後に何言われるかわからんし。ただ、友達はいっぱいおるで。
ISHIYA:顔が広いよね。
「親に「なんてバンドやってんの?」って聞かれても絶対口を割らへん」

SHINTANI:ビジュアル系だけちゃうねん。別にスキンズともメタルとも繋がりあったし。なんでビジュアル系だけよく言われるのかわからんけど。
ISHIYA:珍しいんじゃないかな、そこと付き合ってるパンクが。
SHINTANI:うん。もともとビジュアル系って言葉もなかった時にXを紹介されて。「すごいドラム叩く奴がおる」「見たい見たい」って付いて行ったらそれがYOSHIKIやって。あとは関西にCOLORってバンドがおって「髪の毛赤と緑に染めてるめっちゃヤバい奴おる」「見たい、呼ぼうや」って呼んだら、次の日もう二人で映画見に行くくらい意気投合して。それがDYNAMITE TOMMY。で、あの二人はレーベル持ってるから、そこから繋がりも増えていって。だからエクスタシー・レコードとフリーウィル・レコードで広がっていった感じ。言ってしまえば今のビジュアル系の子は全然知らんねんけど、エクスタシーとフリーウィルのバンドは知ってる。今でも仲がいい。
一一ISHIYAさんもYOSHIKIさんと交流があるし、別にビジュアル系って水と油ではないですよね。
ISHIYA:うん。こっちはそんなつもりもないし、仲良くなったら飲みに行くし。
SHINTANI:特にYOSHIKIとTOMMYはハードコア好きやったから。
一一TOMMYさんもけっこうヤンチャをしていたそうですね。
SHINTANI:異常者やで、異常者。
ISHIYA:異常者が異常者って言ってる。だから意気投合したんでしょ(笑)。
一一彼、自宅の前で通行料を取っていたというのは本当ですか。
SHINTANI:あぁ。あったなぁ。
ISHIYA:高校生にでしょ?
SHINTANI:そう。あれ俺のせいってことになってんねんけど……ほんまやわ。
ISHIYA:ははは。それくらいのことは平気でするんだな。でもDYNAMITE TOMMYと仲良くなって、あのへんのバンドとの繋がりが増えていったのはデカいよね。DYNAMITE TOMMYも面倒見がいいんだろうね。いろいろ紹介したりしたんだろうね。YOSHIKIはそういうタイプじゃないから。人に誰かを紹介して誰と誰を繋げるとか、そういうのはなくて。
SHINTANI:いや、紹介してくれたよ、YOSHIKI。
ISHIYA:あ、ほんと?
SHINTANI:うん。かまやつひろし(一同笑)。麻布のバーで紹介されて「あ、どうも初めまして」「初めまして」って言うだけで……どうせいっちゅうねん!
ISHIYA:はははははは。
一一こうやって聞くと好意的に話してくださるのに、巷では真偽のわからない怖い話ばかりっていうのは、ちょっと不思議でもあります。
ISHIYA:いやいや、実際やってることはアレだから。
SHINTANI:うーん、そやなぁ。
ISHIYA:で、SHINTANIはそれを面白おかしく喋れる人だから。
SHINTANI:俺、でもな、親に「なんてバンドやってんの?」って聞かれても絶対口を割らへん。そこだけは喋らへん。
一一そうですよね(笑)。このバンド名の由来も教えてもらえますか。
SHINTANI:バンド名っていうか、もともとチームみたいなの作ってて、その名前がRAPESやってん。
ISHIYA:TRASHみたいな感じなんだ。
SHINTANI:うん。で、そのチームの中でバンドやろうって話になっていくけど、みんな練習もせえへんし曲も作らへんから。もういらん、みたいな感じでバラけていって。それが10代の時。俺よく捕まったりしてたから保護観察がずっと付いてたんよ。
ISHIYA:10代は枷があったんだね。
SHINTANI:そう。大阪に保護氏がいて、お寺のお坊さん。16からハタチまで保護観察。
ISHIYA:ずーっとじゃん。
SHINTANI:18で一回切れたけど、またすぐ捕まって保護観察付いて。ハタチになったらその関係も切れるから、さすがに挨拶行こうと思ってお寺に行ってみたら、記憶にうっすらしかない保護氏の方、亡くなっとった。
ISHIYA:マジで?
SHINTANI:マジで。2日前に亡くなってたらしい。「結局この人と俺の関係、なんやったん?」みたいな。それで帰ってから速攻で髪の毛赤く染めて、メンバーに「バンドやるで!」って。それがハタチちょうどの頃。
「バンド同士仲が悪いとか、そういうのはなかった」

ISHIYA:全然ない。仲良かった。お客さんとバンドの揉め事はあったけど、バンド同士仲が悪いとか、そういうのはなかったよね。
SHINTANI:昔から東京と大阪のバンドで一緒にツアー回ったりしてたから。どこ行っても仲はええねん。
一一安田潤司監督の著書『パンクス 青の時代』を読むと、関東VS関西の空気が感じられるんです。G.I.S.M.の大阪公演。
SHINTANI:対立ではない。G.I.S.M.とかSAKEVIさんは一線置きたいタイプやから。自分らの差別化が好きなんじゃないかな。
一一エッグプラント閉店時のライブで、横山さんが地元パンクスにいきなり殴られたという話は……。
ISHIYA:(SHINTANIが)いきなり殴ったね。そもそも本に書いてあるように、最初から揉めてて、俺がライブハウスに入った時には、もういたのよ。
SHINTANI:椅子とかボーンと投げてきて、それが俺に当たったんよ。
一一で、殴り返す。
ISHIYA:うん。一発で終了。
SHINTANI:そのあと外に連れ出されていった、みたいに書いてあるけど、連れ出されてない。むしろ楽屋に入っていくねん。俺らはSAKEVIさんより出番が先やから、準備せなあかんし。そしたらこの安田って人が「いや、入らないでください。入られたら今日ライブができないかもしれない」って騒いでて。その人が何者か知ったのは数年後。SAKEVIさんと電話で喋ってる時に「あの時一緒にいた奴、あれ映画監督だよ」って言われて。「あぁ、『ちょっとの雨ならがまん』の人なんや。へぇー」みたいな。
一一SHINTANIさんは、横山さんだとわかっていて殴ったんですか。
SHINTANI:うん。それ以前、エッグプラントでノイズやってる時に「警備に来てくれへん?」って言われて、SAKEVIさんの前で俺警備してたことある。だからもともと面識はあった。
ISHIYA:わかってなくて殴ったのがMITCHUNG(OUTO)。
SHINTANI:そやな(笑)。
一一本にも書いてあるけど、東京じゃまずありえない話に思えます。
ISHIYA:あの出来事があってから、横山さんはなんか思ってたんじゃないかな。SHINTANIの顔見るとスイッチが変わってたもん。
SHINTANI:会うた時はそうでもないけど、電話では毎回揉めとった。俺の喋り方も気に入らんみたいで。「てめぇ! ちゃんと聞いてんのかよ!」って最後は怒り出す。関西の丁寧語ってあるやん。あれがあんまり通じんみたいで。アナーキーの(仲野)茂さんにも「SHINTANIは出会った時からタメ口」って言われるけど、俺は出会った時から丁寧語のつもりやねん(笑)。
ISHIYA:わかんないけど、たぶん馴れ馴れしく感じるんだろうね。
一一その日以外で、G.I.S.M.とRAPESって対バンはしてるんですか?
SHINTANI:あるある。2回くらい。顔は合わしてるよ、けっこう。
一一シンパシーを感じたことは?
SHINTANI:……あんまりないかな。
ISHIYA:ははははは!
SHINTANI:ただ、やっぱり人間臭いところある人やな、とは思ってた。なんか弱気になった時とか、けっこうしんみりした話をする。最後は怒り出すねんけどな。でも弱気になって連絡してくること、2回くらいあったかな。珍しいこと言うねんな、と思いながら聞いてた。
ISHIYA:あったね、そういうとこ。たまーに。
SHINTANI:あった。でもだいたいは怒りで電話してくる。
ISHIYA:最初から「てめぇ!」で始まる電話。「あー、来たよ」みたいな。
SHINTANI:「なんで俺のとこにかけてくる?」って思うよな。電話が好きやねん。しかも長い。
ISHIYA:一回かかってくると2時間くらいは続く。
一一横山さんも都市伝説みたいな話が多くて、いち人間としてのリアリティを感じることが少ないので、こういう話は貴重です。
ISHIYA:本人がそういうところ、出したがってなかったんじゃないかな?
SHINTANI:うん。本人は都市伝説みたいなイメージを大事にしてた。
ISHIYA:そこを利用して、G.I.S.M.のイメージ作っていったところはデカかったんじゃないかな。逆に普通の話をするのはあんまり好きじゃなかったのかも。だから死んだ後にいっぱい出てくんだと思う(笑)。
一一SHINTANIさんは逆ですよね。伝説化されたいタイプではない。
SHINTANI:全然ない。平凡な人間やと思われたいぐらい。
ISHIYA:まぁそれは無理があるな(笑)。
「あのまま大阪にいたら解散してたと思う」

SHINTANI:いつやろうな? 29で出てきた。
ISHIYA:大阪時代の最後のほう、たまにRAPES企画に呼んでもらって一緒にやったけど、もう客が満タンだった。今でも関西でRAPESって動員すごいもんね。みんな「RAPESが帰ってきた!」みたいなところがあるんじゃない?
一一なぜ上京を決めたんでしょう。
SHINTANI:ライブやってもお客さん入ってまうし、なんの苦労もなくなってまう。このままやってたら飽きる。安定してしまったらたぶん解散するやろうなぁ、みたいな。それで東京出ようかって。
ISHIYA:大坪(ギター/REE)もそれ思ってたみたい。全員で意見一致して、よし行こうってなったらしい。
SHINTANI:なんか、何やっても上手いこと行くのがあんま面白くなくて。このまま行くと刺激がなくなる。そうなるともう解散するなって。実際そうちゃう? あのまま大阪にいたら解散してたと思う。
ISHIYA:あー、予想ができちゃうとね。それはわかる。俺も先が見えてくると頭おかしくなりそうになるし。そういう時に海外行ったの。それが今に繋がってる。全然違ったから。あのまま日本でライブやってツアーやってレコーディングして……ずーっと同じこと20年以上やってたら、全部予想できちゃうからね。
SHINTANI:今はでも、自分らで企画とか組まんで、人から呼んでもらった企画で、だいたい曲もおんなじで。その安定は気持ちええねんけど(笑)。
ISHIYA:ははは。DEATH SIDEはそう。今は全然新曲なんかやらないし。呼ばれた時にある曲をやるだけ。
一一RAPESは今後、新曲を作ったりする予定はないんでしょうか。
SHINTANI:メンバーが固まってないから。ヘルプのまんまやから。でも今のメンバー、かなりええねん。
ISHIYA:ライブ見ててもいい感じだよね。新作ね、聴きたいね。




















