【漫画】音楽業界を追放されたおじさん、歌姫JKと出会うーー『Beat again ビートアゲイン』が激エモ

――Xでの反響はいかがですか?
火鳥:もともと読切として描いたものでした。2023年に旧Twitterに投稿したら9.3kいいねが付いて、そのバズをきっかけに連載ができないかなと今の出版社に持ち込んだんです。その連載版の第1話が本作ですね。
満月:思った以上によかったです。漫画で音楽を表現するのは難しいのですが、「音が聴こえた」という感想が多くて作家冥利に尽きるなと感じました。
――音楽を題材に描こうと思ったのはなぜでしょう。
火鳥:満月の姉がメジャーデビューもしたミュージシャンだったのですが、SNSや業界で大変な経験をしたことがきっかけでした。それから音楽を取り上げようと話し、私たちのデビュー作『星は巡る』でもアイドルにまつわるストーリーを描きました。
満月:姉からリアルタイムで業界の良し悪しの両面を聞いていたんです。なかには絶望的な話もあり、「そういう人が救われるには?」と考えていましたね。
火鳥:前作を描くなかで、音楽を表現する奥深さや楽しさを知り、もっとメッセージ性がありつつ楽しめるものをと考えて作ったのが『Beat again ビートアゲイン』です。
――なぜ、おじさん作曲家を主人公に?
火鳥:最初は高校生が主人公だったんです。でも「後悔からの再起」を描くにあたり、おじさんを中心にした物語の方がいいんじゃないかと当時の担当さんが言ってくれて。
満月:好きな音楽を嫌いになってしまって、賞賛していた人たちに掌を返されたスズヤにとって、ルルは希望のメタファー。それを強く浴びたときに人がどうなるかを描きたいと思いました。
火鳥:自分の才能と純粋に向き合っていたからこそ、ルルの純粋さが響くということもひとつの描きたいポイントですね。過去に向きあうという意味でも年齢差はクリティカルなのかなと。
満月:スズヤへの共感の声は多いですね。「自分も昔炎上を経験しました。だからこそスズヤの今後が楽しみ」や「勇気をもらって転職しました」という感想もありました。一方で「しっかりした大人が側にいるルルが羨ましい」という若い人からの声もありました。
――海町を舞台にしたきっかけはありますか?
火鳥:海街への個人的な旅行でAirbnb(民泊サービス)を利用したんですよ。宿泊客がリビングで話せるような感じの宿で、そこで出会ったシンガーソングライターの子が「海」をテーマにしたオリジナル曲を弾き語りしてくれたんです。
それを聴いて、海町を舞台にした音楽漫画が気持ちいいんじゃないかと。傷ついた音楽家が訪れて再生する話にしたら、ポジティブかつエモく描けるかなと。そこから満月や色々な人のアドバイスをもらいつつ話を組み立てていきました。
――作画についてはいかがでしょう。
満月:個人的に読者の絵の印象は0.5秒で決まると考えているので、「わかりやすさ」を意識しています。キャラの感情や音の質感を表現する上で「誰が何をやっているか」というリアリティラインは特に大事にしていますね。
楽器屋の店員さんにギターを弾いてもらって、自分も触らせてもらったり、まずは実際に知ってアウトプットすることを心がけました。そういう面が第1話にはよく出ていると思います。
――コードを押さえる時の手の形など、細部にこだわりやリスペクトを感じました。
火鳥:音楽を好きだったり、演奏している人が読んでノイズが少なくなるようにエラーがないように満月とチェックしながら作っていきました。だからこそ携わる方へのインタビューを執念深くやっています。
――ユニットとして制作している意義は?
満月:もともと私はひとりで作ったものをネットで公開していたのですが、火鳥のアイデアが加わるとより強いものができるなと感じます。違う目線が入るだけで作品が磨き上げられる気がしました。
火鳥:2年半くらい一緒にやっていますが、このふたりじゃないと作れないものを今作っているので、自分ひとりで作るものはまた違うテイストになる気がします。
――今後、本作はどう描いていきますか?
満月:漫画やアニメ、音楽という自分がこれまで培ってきた経験を総動員して表現していきたいですね。それで同じ感動を共有できたら嬉しいです。
火鳥:「困難からの再起」という普遍的なテーマを扱いながら、私も学び成長させてもらっているなと感じています。自分自身も今後、本作がどうなるのかが楽しみです。
■作品情報
『Beat again ビートアゲイン』
著者:火鳥満月
出版社:フレックスコミックス
【あらすじ】
世界が注目する作曲家“スズヤ”は大炎上をおこし音楽界から追放され、小さな海街に行き着いた。以来、それなりに平穏な日々を送っていたスズヤの日常は、一人の少女との出会いで一変する。
天真爛漫な女子高生“ルル”は、抜群の歌唱力を持ち、寂れた地元を音楽で盛り上げるべく奮闘していた。若き才能を前に、スズヤの中に燻っていた音楽への熱が蘇り——。
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