芥川賞・直木賞「該当作なし」に書店や作家から戸惑いの声 「大打撃」「文芸担当泣いてます」
第173回芥川賞・直木賞の選考会が7月16日に行われ、両賞ともに「該当作なし」という異例の結果が発表された。芥川賞での該当作なしは第145回(2011年)以来14年ぶり、直木賞では第136回(2007年)以来18年ぶり。そして両賞が同時に該当作なしとなるのは、1997年・第118回以来、実に28年ぶり6度目のことである。
主催の日本文学振興会は、X公式アカウントにて両賞について「残念ながら『該当作なし』という結果に終わりました」と投稿。両賞同時の発表に、読者や書店から驚きと戸惑いの声が広がった。
第173回芥川龍之介賞は、残念ながら「該当作なし」という結果に終わりました。 #芥川賞
— 日本文学振興会 (@shinko_kai) July 16, 2025
第173回直木三十五賞は、残念ながら「該当作なし」という結果に終わりました。 #直木賞
— 日本文学振興会 (@shinko_kai) July 16, 2025
小説家の今村翔吾はXで「作家目線ではそういうこともあるだろうし、選考委員の先生方が悩まれた結果だろうなと納得するんですが。書店目線になると正直辛いかも……」と投稿。文学賞の公共性と、出版ビジネスの板挟みに触れたコメントには、多くの反響が寄せられた。
芥川賞、直木賞、ともに該当作なしですか。
作家目線はそういうこともあるだろうし、選考委員の先生方が悩まれた結果だろうなと納得するんですが。書店目線になると正直辛いかも……。
— 今村翔吾 (@zusyu_kki) July 16, 2025
実際、書店関係者からは悲鳴にも似た声が続く。未来屋書店の公式アカウントは「芥川賞、直木賞の売上がないのは、大打撃です」と率直に明かし、ジュンク堂書店天満橋店や丸善丸の内本店も「文芸担当、泣いてます」「お客様も驚いていた」と投稿。候補作の展開を強化することで、売場を盛り上げようとする工夫も見られる。
正直に言います。
芥川賞、直木賞の売上がないのは、大打撃ですよ。
代わりに何ができるか考えなくては。とりあえず、今言える事は
本、買ってください!!!— 【公式】㍿未来屋書店 商品企画G📚 (@miraiyaofficial) July 16, 2025
#芥川賞 #直木賞
まさかの両方とも該当作なしでした…。
文芸担当、泣いてます😭😭
が!当店には在庫も揃ってます!!
特に今回の直木賞候補作はどれも素晴らしい読み応えの物語たちです✨
文芸コーナー、新刊話題書コーナーにてお求めくださいませ〜! pic.twitter.com/fpz4e29CNK— ジュンク堂書店 天満橋店 (@junkudo_temma) July 16, 2025
【2F文芸書】#芥川賞 #直木賞 どちらも該当作なしでした。書店員、泣いてます。お客様も驚いていらっしゃいました。丸善丸の内本店、候補作すべて揃っております!! ぜひ店頭でお手にとって、お選びいただけたらと思います。 pic.twitter.com/MVZJVNCQTT
— 丸善丸の内本店 (@maruzen_maruhon) July 16, 2025
一方で、「受賞作がなかったこと」に対して前向きな声もある。選考委員の平野啓一郎はXで、「厳正な選考の結果」「すべての候補作に将来の可能性を感じた」とコメント。くまざわ書店錦糸町店は、「28年前の直木賞候補者が今回の選考委員に名を連ねているように、今回の候補者たちも将来活躍するはずだ」と投稿。magma booksでは、読者が“推し”の候補作に投票できるボードを設置し、賞の有無にかかわらず盛り上がれる売場づくりを試みている。
芥川賞は残念な結果になりました。直木賞も、というのは、また更に残念ですが。選考委員を務めて初めての経験で、やはり気が重いですが、厳正な選考の結果です。受賞には至りませんでしたが、全ての候補作に将来の可能性を感じました。詳細は、選評で書きます。
— 平野啓一郎 (@hiranok) July 16, 2025
芥川賞直木賞が28年ぶりにともに「該当作なし」ということで書店としては残念な結果だが、28年前の直木賞候補に今回選考委員の京極夏彦先生、桐野夏生先生、同回の芥川賞候補に今回選考委員の吉田修一先生が名を連ねていたことを思うと今回候補だった先生方もきっと今後ご活躍すると信じ応援できる。 pic.twitter.com/iSf36XTq4U
— くまざわ書店錦糸町店 (@kbc_kinshicyo) July 16, 2025
【#芥川賞 #直木賞】今回の芥川賞・直木賞は該当作なしという結果になりました。せっかくの半年に一度のお祭りだというのに該当作なしでした、で売り場を引っ込めるなんてもったいない!該当作がないならみんなで選んでも楽しいんでないの?ということでボードを作成!! pic.twitter.com/2Sxr5jZCiG
— magmabooks (@magmabook) July 17, 2025
候補者からも続々と投稿があり、『ブレイクショットの軌跡』で直木賞候補となった逢坂冬馬は「落選しました。残念! 明日からまた生きるぞ!」と率直に心境を語った。『乱歩と千畝─RAMPOとSEMPO─』の青柳碧人は「面白いのでぜひ読んでください」と読者に呼びかけている。
直木賞は落選しました。残念!
明日からまた生きるぞ!— 逢坂冬馬 (@AisakaTouma) July 16, 2025
言いたいことはいっぱいあるようで2つだけです。
応援してくださった皆さん、ありがとうございました!
まだお読みでない方、面白いのでぜひ読んでください!#乱歩と千畝#直木賞 https://t.co/VD3P7oEfN8— 青柳碧人 (@aoyagi_) July 16, 2025
今回、芥川賞にはグレゴリー・ケズナジャット、駒田隼也、向坂くじら、日比野コレコの4名がノミネート。直木賞には逢坂冬馬、青柳碧人、芦沢央、塩田武士、夏木志朋、柚月裕子の6名が名を連ねた。いずれの作品も書店で“候補作”として大きく展開されており、受賞作が選ばれなかったことをきっかけに、かえって注目度が高まっている。
今回は「受賞作なし」という形になったが、候補作の持つ魅力や可能性に疑いはない。読者それぞれの中で「自分にとっての一冊」を見つけることが、文学賞のもうひとつの楽しみ方なのかもしれない。






















