アムロが途中で戦死!? 『ジークアクス』とも関連する小説版『機動戦士ガンダム』の衝撃

小説版『機動戦士ガンダム』の衝撃

セイラさんと結ばれる!?『小説版アムロ』

 そして小説版『機動戦士ガンダム』では、アムロがたどる運命も激変している。そもそも物語の始めから『ファースト』と設定が違っており、アムロは成り行きでガンダムに乗り込むのではなく、パイロット候補生として厳しい訓練を受けていたことになっている。そのためホワイトベースの一員として戦うようになった後も、民間人としての自意識と軍人扱いとのギャップで思い悩むような描写は出てこない。

 また、アムロはサイド7の図書館でたびたびセイラを見かけ、憧れを抱いていたという設定に。心の中で愛情をこめて「金髪さん」というあだ名をつけているところが描かれており、2巻ではついに肉体関係をもつに至る。

 ちなみに幼馴染みのフラウ・ボゥは民間人だったため、早々にホワイトベースから降りており、物語の大部分で出番を失っている。

 さらに極めつけは物語終盤の展開だ。アムロは戦場にてシャリアの接触を受け、自分たちと同盟を組んで一緒にザビ家を討ち取ってほしいと伝えられる。そしてシャリア撃墜後に自分の過ちに気づき、同盟を受け入れることに決めるのだが、その矢先にルロイ・ギリアムというジオン軍パイロットの狙撃によって死亡してしまう。

 言うまでもなくアムロは『ファースト』では無事に生還し、その後の『機動戦士Ζガンダム』や『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』にも登場しているため、まさに衝撃の展開だ。

 なお肉体を失ったアムロの意識は戦場を駆け巡り、シャアとブライト率いるホワイトベースの面々が同盟を組むきっかけとなる。そして彼らはギレンとキシリアを倒して一年戦争を終結に導くため、ある意味アムロが平和への架け橋になったとも言えるだろう。

 あらためて物語全体を『ファースト』と比べてみると、小説版はアムロとシャアの内面的な部分がよりストレートに描かれている。またシャアの過激な行動をアムロが阻止するという構図になっておらず、戦争を終わらせるという理想のために協力し合うという着地点がはっきりと提示されているのも印象的だ。

 物語をコンパクトにまとめている分だけ、富野監督のメッセージを濃密に感じられるのが小説版の大きな魅力。『ジークアクス』から『ガンダム』の世界に興味をもった人は、ぜひ触れてみてほしい。

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