グルメ漫画の最新トレンドは「女子×B級グルメ」? B級グルメ研究家「ツウなおじさんが”分かる!”と共感」

グルメ漫画のトレンド「女子×B級グルメ」

 キャンプに釣りに登山など、漫画で描かれることで新たなファンを獲得する趣味の世界。「料理」もそのひとつで、これまで数々の名作グルメ漫画が誕生してきた中、ここ最近で目立つのが「女子×B級グルメ」をテーマとした漫画だ。

『女優めし』(集英社)

 たとえば『週刊ヤングジャンプ』で連載中の藤川よつ葉氏、うえのの氏による『女優めし』(集英社)は、2025年3月に元乃木坂46・堀未央奈主演でドラマ化。同作は国民的人気女優の和泉撫子がB級グルメをはじめとする街の大衆店でこっそりとお忍びグルメを楽しむというもの。地下街でやきそばをホッピーで流し込んだり、コの字型カウンターの居酒屋で煮込みに舌鼓を打ったりと、国民的女優という立場とのギャップがあるB級メニューのチョイスも、本作の魅力のひとつだ。

 また、『イブニング』で連載中の松本明澄氏の『立ち飲みご令嬢』(講談社)は、5月にコミックス6巻が発売。同作はミシュラン店オーナーを父に持つ主人公の美食家令嬢が密かにハマっている「立ち飲み屋」に足繁く通う物語で、唐揚げにポテサラにナマコ酢などなど、安くて美味しい立ち飲みグルメ情報も堪能できる漫画だ。

『立ち飲みご令嬢』(講談社)

 こうした、どちらかと言えばおじさんが好みそうなB級グルメの魅力を女性主人公が伝える漫画が人気を集めている。『立ち食いそば大図鑑』(スタンダーズ)の著者で、立ち食いそばライターとしてB級グルメを研究する本橋隆司氏は「おじさんがB級グルメ好きなのは当たり前ですが、女性が主人公だというのが斬新。令嬢だったり女優だったり、ギャップがあるキャラが語ることでグルメ情報がスッと入ってくる」と指摘する。詳しく話を聞いた。

「女性B級グルメのジャンルの作品が増えているのは、鳴見なるさんの『ラーメン大好き小泉さん』(秋田書店)のヒットの影響が大きいように思います。同作は転校してきた女子高校生・小泉さんがかなりのラーメン通だったという漫画ですが、ネタがかなり細かいところをついているのがポイントで、作家の豊富な知識と綿密な取材が伝わってくる。ツウなおじさんが、読後に”分かる!”と感想を人に話したくなる魅力があるんです。もともとB級グルメの世界は、かつては2ちゃんねるなどで男性が意見を交換して楽しむものでしたが、“美味しい店や食べ方の情報を共有する楽しみ”が漫画の感想とともに広がっていった。B級グルメが趣味として定着するきっかけになった作品でもあると思います」(本橋氏、以下同)

 前述した『立ち飲みご令嬢』も、主人公の美食家令嬢という設定を生かし、メニューについての細かい解説が語られる。そこに混雑する店での注文の仕方や隣客との付き合い方など「立ち飲み屋のマナー」も描かれているが、そこで描かれるのはツウも納得のコアな最新情報だ。

「寿司や高級レストランと違い、B級グルメは大声で語るものではないというイメージがある。立ち飲みというジャンルひとつとっても、立ち飲み屋の作法とか、その店でしか食べられないメニューとか“『晩杯屋』のこれがいいんだよね”とわざわざ言うような人はよほど熱いコミュニティに属している人しかいない。家族や同僚に言うような話でもない。これを漫画にして見せることで”それな!”という潜在的なユーザーの共感が呼べるんです。うんちくそのものがネタになっているんですが、それを女性キャラが語ることでより効果的に見せているように思います」

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