グルメ漫画の最新トレンドは「女子×B級グルメ」? B級グルメ研究家「ツウなおじさんが”分かる!”と共感」

グルメ漫画のトレンド「女子×B級グルメ」

立ちそば研究を生かした「ギャルそば」漫画

『そばギャルとおじさん』(光文社)

 そんな中、長年立ち食い蕎麦を研究してきた本橋氏が原案・監修を務めた漫画『そばギャルとおじさん』が漫画サイト『COMIC熱帯』でスタートした。

 同作は立ち食いそば店の食べ歩きを趣味にする中年サラリーマンの秋丸泰造が、あるとき列に並んでいたゴリッゴリの金髪ギャル・じゅりなと知り合い、ソフレ(そばフレンド)としてそば屋巡りをするというもの。じゅりなは今のところは年齢や職業などがいっさい謎だが、立ち食いそばの作法に精通しており、おじさんが驚くような注文の仕方をすることも。毎月第2・4金曜日に更新され、現在第4話までが公開されているが、毎回どのそばを選ぶかが物語のカギとなっており、ディープな“そばうんちく”が見どころだ。

「立ち食いそばって言ったら全部同じと思われるかもしれないですが、実は相当奥が深く面白い世界なんです。店選びはもちろん、生卵の食べ方やコロッケの崩し方、第1話で登場させた”あみ天”のようなトッピングまで、そばの細かいディティールをどう描くかを細かく決めています。これまで私が行ってきた立ち食いそば研究の集大成です」

 こうしてディティールにこだわった結果、読者から思わぬ反響もあったという。

「第2話でテーマにした”生玉子”の食べ方について、これまでの研究結果から”崩さずにそのまま丸呑みするのは少数派”というスタンスで原作を書いたんですが、いざ漫画が公開されるとXでは“俺は丸呑み派だけど”という感想が予想以上に多く届いたんです。立ち食いユーザーの好みを正確に把握できていなかったことに気づかされました。また、漫画公開後に”あそこのそばうまいっすよ”という情報が寄せられることもありましたし、やはりふだん食べている自分だけの店を語りたいという欲求があるんですよね。こうした反応はブログのようなテキストよりも大きいもので、漫画という誰もが手に取りやすいメディアならではのものだと思います」

 グルメも趣味のひとつ。「ラーメン」や「立ち飲み」や「立ち食いそば」の食べ歩きも趣味としてすっかり定着し、SNSではそれぞれの推しの店やメニューを語る姿もよく目にするようになった。これらも「グルメ漫画」の影響のひとつと言えるのではないだろうか。

「自分で言うのはなんですが、食い物のことを語るなんてのは下品で野暮なものではある。ですが、楽しい。“あそこの店、俺は好きなんだよな、でもそこそこだし、人に言うまでもないよな”ということを、ふと隣の人に話すと、意外と共感してもらえて、会話が一気に弾けたりもする。そういう喜びって高級料理には逆にないもののようにも思います」

 推しのラーメン店、定番のマイそば屋、絶対外せない酒場メニュー。誰の中にもある「語りたいけど語れなかった」日常の味。今後も、そんな“自分だけの味”を語る漫画が、新たな食欲の扉を開いてくれるかもしれない。

■関連情報
漫画サイト『COMIC熱帯』
『そばギャルとおじさん』
https://www.comicnettai.com/book/773

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