那須川天心「カエルパンチ」どんな技? 『はじめの一歩』『CHIBI』から学ぶ、その威力

 6月8日、“世界前哨戦”に勝利したWBC世界バンタム級1位の神童・那須川天心が見せた「カエルパンチ/カエル跳びアッパー」が話題になっている。カエルパンチは深くしゃがみ込んで跳び上がるように放つアッパーで、漫画でもお馴染みの“必殺技”だ。

 カエルパンチは元WBA・WBC世界スーパーウェルター級王者、輪島功一の得意技として知られる。1971年、初の世界戦となったWBA・WBC世界スーパーウェルター級王者カルメロ・ボッシとの一戦で放たれたのが有名で、その威力、派手さと意外性でファンの心を掴んだ。

 そんな印象的な技だけに、ボクシング漫画でも存在感を示している。既刊143巻を数える人気作『はじめの一歩』では、鴨川ジム所属の青木勝が幾度となく繰り出している。コミカルで情けない描写も多い青木だけに、ややギャグ要素もある描かれ方もしているが、意表をつく高威力のパンチとして機能。返り討ちにあうリスクもあるが、相手との実力差を埋める飛び道具でもあり、重要な場面でKO勝利につなげている。

 一方で、『キャプテン翼』で知られる高橋陽一が描いた『CHIBI』では、主人公の仲本智が得意技としている。運動音痴で気弱な仲本は、学校でいじめを受けてきた。そんな彼がボクシングと出会い、成長していく姿は『はじめの一歩』の主人公・幕之内一歩と重なるが、違うのは周囲に比べて身長が低く、パワーもないこと。そんな弱点を補ったのが、跳び上がることでリーチ差を一気に詰め、全身で力を込めて放つカエル跳びアッパーだった。

 パワーも技術も確かで、相手の意表をつくギャンブルの必要性も薄いと思われる那須川天心が繰り出すのは意外だったが、本人は試合後に「考えすぎ」で小さくなってしまっていることを感じ、戦い方の幅を広げる意図でトライしたと語っている。また先駆者の輪島功一は、自身のYouTube等で引いて守る王者への対抗策だったことを明かしており、相手のリズムを乱す挑発的な効果もあるようだ。

 モーションが大きくリスクがある一方で、意外性・威力・駆け引き等、さまざまな面で魅力のある「カエルパンチ」。実戦で見られる機会は限定的だが、漫画の世界では今後も描かれていきそうだ。

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