『はじめの一歩』幕之内一歩の最短&最長試合は? 復活を祈って名勝負を振り返る

『はじめの一歩』幕之内一歩のキャリア

 1989年に週刊少年マガジンで連載をスタートし、既刊136巻という大作になっているボクシング漫画『はじめの一歩』。最新の展開では、フェザー級の絶対王者リカルド・マルチネスと、天賦の才能を持つ野生児・ウォーリーのタイトルマッチが描かれてきた。

 多くの個性的なキャラクターが登場し、階級を問わず多くの名試合が繰り広げられてきた『はじめの一歩』。しかし、主人公の幕之内一歩は現在、パンチドランカーの疑いで現役を退いている状況で、長年のファンとしてはもう一度リングに上がる姿を見たいと期待してしまう。一歩はきっと復活してくれるはず……という願いも込めて、本稿ではそのキャリアを振り返ってみたい。

 一歩の現在までの戦績は、26戦23勝3敗。勝利も敗北もすべてKOで決まるという派手なキャリアだ。作品の歴史と激戦の数々を考えると、いまはいったい何歳なんだ? と気になる人も少なくなさそうだが、一歩は17歳でプロデビューしており、現在は25歳。最高位はWBC世界ランキング10位で、チャンピオンベルトに再び挑戦するのも現実的な若さだ。

 ちなみに、最短KO勝利は「1R 0:32」で、日本王座の3度目の防衛に挑んだ李龍洙戦。作品全体を通じたベストバウトに挙げられることも多い「鷹村守VSブライアン・ホーク」の前哨戦として行われ、必殺のデンプシーロールで一気に決着をつけた試合だ。

 逆に最も時間がかかった試合は「8R 2:37」。ノンタイトル戦として行われたマルコム・ゲドーとの一戦で、相手は金次第で八百長を行うボクサーであり、「32戦22勝(15KO)6敗4分」という戦績以上に優れた実力があった。高度なディフェンスと間合いをはかりながらの攻撃に一歩が手を焼いた試合で、その分KOのカタルシスも大きかった。

 一歩は恐るべきパワーを持った世界レベルのボクサーだが、現状が示すように「無敵」ではなく、その役割は先輩の鷹村が担っている。「苦戦しながらも最終的には主人公が勝つもの」と思っていた読者に衝撃を与えた最初の一敗は、一歩が初めて日本タイトルに挑んだ、不屈のチャンピオン・伊達英二戦だった。

 詳しくはぜひ単行本を読んでいただきたいところだが、この試合に関しては、天才ボクサーとして期待を背負い、23歳で挑んだ初の世界戦でリカルド・マルチネスになすすべなく敗れ、悲しい事故で一度は引退したものの決意のカムバックを果たした伊達には、勝利に相応しいドラマがあった。心臓を強く撃ち抜き、相手の動きを一瞬止めてしまう「ハートブレイクショット」は、作中でも人気の高い“必殺技”だ。

 当然、その他にも印象に残る名勝負は多く、例えば東日本新人王決勝戦の間柴了戦、日本フェザー級タイトル戦で、全日本新人王決勝戦以来の激突となった千堂武士戦などは、双方に濃密なドラマがあり、手に汗を握る戦いだった。再戦を見てみたい相手も多く、何より、一歩の憧れであり最大のライバルと言える宮田一郎との一戦を今でも待ち望んでいる読者は少なくないだろう。井上尚弥の快進撃でボクシングという競技への注目度も上がっているなか、『はじめの一歩』の展開にも注目したいところだ。

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