井上尚弥は『はじめの一歩』で例えるとどのキャラクター? 鷹村守との共通点とさらなる武器
プロボクシングの前世界バンタム級4団体統一王者、井上尚弥の次なる一戦が決定した。相手はWBC/WBO世界スーパーバンタム級統一王者のスティーブン·フルトン(アメリカ)。5月7日、横浜アリーナでの対戦だ。
フルトンはかつてない強敵だが、井上は階級を上げるたびに「通用するかどうか」という議論にさらされ、いつでも満点以上の答えを出してきた。野球における世界一の二刀流·大谷翔平、あるいは2022年カタールW杯で優勝経験国のドイツ・スペイン両国を撃破したサッカー日本代表、NBAで活躍する渡邊雄太・八村塁のように、“漫画を超える”活躍を見せてきたアスリートだ。
漫画は好きだが現実のスポーツはあまり詳しくない、という人は少なくない。そんな人のために、現行のボクシング漫画としてトップを走る人気作『はじめの一歩』(森川ジョージ)に例えると、井上尚弥というのはどんなボクサーなのか。
衝撃的なKOを連発する井上は、主人公の幕之内一歩と身長がほぼ同じ(一歩が164cm、井上が165cm)で、「ハードパンチャー」という共通点もあるが、一歩のようにパンチをもらいながら愚直に、泥臭く勝つ選手ではない。
よく引き合いに出されるのは作中最強の男、現在まで24戦24勝24KOというキャリアを誇る鷹村守だ。階級こそ違うが、24戦24勝21KOの井上と戦績が極めて近く、目標とする「6階級制覇」に現実味があるのも近しい。
リングでの自信あふれる姿ーーもちろん戦略的な側面が大きいが、時にノーガードで相手を煽ってみせるようなエンターテイナーぶりも、あるいは鷹村的と言えるかもしれない。鷹村の方がやや野生的なスタイルに見えるが、強烈なパンチ力と高いボクシングIQは、やはり互いに通じるものがある。
一方で、井上には優れた武器として、相手のジャブにでも合わせてしまう高精度のカウンターがある。つまり大雑把に言ってしまえば、一歩のパンチ力と、その永遠のライバルである宮田一郎のカウンターのキレを併せ持った選手であり、「漫画」ではなく「現実」を生きる対戦相手の多くが太刀打ちできないのも無理はない。
井上がスーパーバンタム級を制すれば、その内容によって、次は一歩と同じフェザー級へ……という道筋も見えてくる。普段はリアルの試合を観ない漫画好きも巻き込めるスター性が、日本ボクシング界をかつてない形で盛り上げていきそうだ。