『アオアシ』小林有吾の数学×料理漫画がアニメに 『フェルマーの料理』が導き出す”美味しい”の解

数学×料理 『フェルマーの料理』アニメ化

 天才的な数学の才能を持つ高校生、北田岳(きただがく)が天才料理人との偶然の出会いから料理人としての人生を歩むことになる物語『フェルマーの料理』(小林有吾/講談社)。2023年10月には高橋文哉と志尊淳主演による全10話のドラマが放映され好評を博したことも記憶に新しい本作。2025年に入り待望のアニメ化(7月放送)も発表された。


 作者の小林有吾にとってはJリーグユースを舞台に描いたサッカー漫画『アオアシ』(小学館)に続き自身2作目のアニメ化となる。

料理を以て神に挑む

 数学の優秀な成績を評価され、私立ヴェルス学園の特待生としてその将来を嘱望されていた岳。しかしより優れた才能を持つライバルとの実力差を目の当たりにし、心折れてしまった岳は数学者の道を諦めてしまう。

 そんな岳の数学を用いた新たな可能性に惚れ込み、料理の世界に触れるきっかけとなったのが若干23歳にして日本フレンチ界の新星と呼ばれるレストラン「K」のオーナーシェフ、朝倉海(あさくらかい)だ。

 海は岳の数学的思考から導き出す料理への解に心惹かれ、まるでその化学反応を楽しむかのように料理経験に乏しい岳に無理難題を叩きつけていく。

 崖っぷちの状況に追い込まれた岳の、苦しみながらもやがて子供の頃に夢中で数学を解いていた時の感情がよみがえり、ワクワクしながら料理に打ち込む姿。そしてその結果生み出された料理は万人の想像を超えてくる驚きと感動に満ちているのだ。

数学から導き出す方程式という名のレシピ

 本作の特徴はなんといっても数学×料理という要素の掛け算により料理漫画としての面白さを相乗効果で生み出している点だろう。ただ、一般人には数学の知識が料理人にとって大きなアドバンテージになるのかどうかは理解が難しいところだ。そこで岳と同じく数学を背景に持つ料理人として作中でも紹介されている米田肇シェフについて触れておきたい。

 高校時代数学に没頭し全国模試の数学で1位の実績を誇り、近畿大学理工学部を卒業後エンジニアを経て料理の道に進むという異色の経歴を持つ。その後自身でレストランを開業後、わずか1年5ヶ月という早さでミシュラン三ツ星を獲得したのだ。数学的発想が料理にもたらす好循環を物語る好事例といえるだろう。

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