「ジャンプ+」は令和ホラーの最前線?  次々と連載始まる“変化球”なホラー漫画の人気作

「ジャンプ+」は令和ホラーの最前線?  次々と連載始まる“変化球”なホラー漫画の人気作

オカルト青春漫画にホラーコメディも!

  2024年12月5日から始まった宇乃花空樹の『アスラの沙汰』も、ホラー要素を多分に含んだ作品だ。単行本第1巻には、『僕のヒーローアカデミア』の作者・堀越耕平が「なにか、とても自罰的な怨念を感じました。心配です。」と帯コメントを寄せたことでも話題を呼んだ。

 主人公の天代アスラは、苛烈なイジメに遭いながらも「天罰」の存在を信じている純粋な中学生。物語は彼が路地裏の怪しげな商人から、不思議なカギを授けられるところから動き出す。それは「地獄の扉を開く」という曰くつきのアイテムで、悪人が誰にも罰されないことを悟ったアスラは天の代わりに“断罪”を行っていく。

 『笑ゥせぇるすまん』に近い雰囲気で、人間の業を抉り出していく筆致は迫力に満ちている。また悪人をドアの向こうに引きずり込んでいく地獄の鬼は恐ろしい見た目で、カタルシスと共に恐怖を感じさせる。

 さらに2024年11月16日から始まった『都市伝説先輩』は、独特のテンションが持ち味のホラーコメディ。『雀児』で鮮烈なデビューを飾った平岡一輝による新連載だ。

ヒロインのもくめは、オカルトサークルに憧れて大学に入学してきた新入生。きさらぎ駅に行くため電車に乗り続け、自身が怪奇現象として噂になったこともあるという筋金入りのオカルトマニアだ。彼女は都市伝説を引き寄せる体質をもつオカルトサークルの先輩・くぐつと共に、さまざまな怪奇現象に立ち会っていく。

 口裂け女など、有名な怪異が次々と登場してくるのだが、もくめを筆頭とした人間サイドも強烈な個性をもっており、怪異と人間がコミカルに渡り合っていくのが同作ならではの面白さだ。

  そして普通のホラーとは別の形で恐怖を味わいたいという人には、2月25日から始まった『ラブイズオーバーキル』がオススメ。作者は『ハンサムマストダイ』で知られるアストラ芦魔で、今作でも唯一無二のハイテンションギャグを描き出している。

  遺体の修復作業(エンバーミング)にかけては天才的な腕前をもつスモア・ミルウォーキーは、ある日凶悪犯のデッド・ペインキラーに一目ぼれ。しかしペインキラーは処刑されてしまい、彼女のもとに死体処理の依頼が舞い込んでくる。そこで完璧な死体処理を行ったところ、ペインキラーは奇跡の復活を遂げ、スモアは半ば強制的に結婚生活を送ろうとする……。

  基本的にはコメディ作品なのだが、スモアのペインキラーへの愛の重さは凄まじく、もはやホラーに近い。たとえばこめかみに骨伝導スピーカーを埋め込み、脳内に直接「大好き大好き大好き大好き」と囁いたり、四肢をバラバラにして縫い合わせることに喜びを感じたりと、サイコキラー的な振る舞いを連発する。「結局、人間が一番怖い」系のホラー漫画と言えるかもしれない。

  多種多様なホラー漫画が並んでいる現在の「ジャンプ+」。5月14日からは、『地獄先生ぬ~べ~PLUS』の新連載が始まることも発表されている。令和のホラーブームに平成のレジェンドホラー漫画まで加わり、さらなる盛り上がりが生まれそうだ。

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