日本を代表するイラストレーター・中村佑介の作品が宝塚に集結! 「中村佑介展 in TAKARAZUKA 2025」レポ

4月25日から兵庫県の宝塚市立文化芸術センターにて開催される、「中村佑介展 in TAKARAZUKA 2025」。開催前日に行われた内覧会へ、ひと足先に行ってきました。
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今や日本を代表するイラストレーターの一人となった中村佑介氏。ASIAN KUNG-FU GENERATIONのCDジャケットをはじめ、『夜は短し歩けよ乙女』や『謎解きはディナーのあとで』といった書籍のカバー、はたまたテレビアニメ版『四畳半神話大系』のキャラクターデザインや、大阪国際女子マラソンのメインビジュアル、各種商品のパッケージなど、幅広い仕事ぶりで知られています。
そんな中村氏の出身地が宝塚。その縁もあり、宝塚観光ガイドブックの表紙なども描いています。そして今回、満を持しての開催となったのが「中村佑介展 in TAKARAZUKA 2025」。原画300点以上、完成画のパネル270点以上、さらに映像展示や実物資料も展示されており、過去最大の物量で23年におよぶ中村氏の画業を振り返ります。
というわけで宝塚駅に到着。宝塚駅からは宝塚歌劇団の大劇場に続く直通ルート「花のみち」が通っているのですが、そこにも中村のイラストをあしらったフラッグが下がっております。会場である文化芸術センターでは、内覧会の前のオープニングセレモニーとテープカットも開催。セレモニーでは中村氏が故郷宝塚に対する気持ちを語ってくれました。また、文化芸術センターが建つ前に同じ場所にあった遊園地「宝塚ファミリーランド」に関する思い出も披露。中村氏の作品にたびたび登場する「白い虎」と宝塚ファミリーランド内の遊園地で飼育されていたホワイトタイガーとの関係など、地元ならではのエピソードを話してくれました。
会場内に入って驚かされるのが、まずその物量。ASIAN KUNG-FU GENERATION関連作品や森見登美彦関連作品、東川篤哉関連作品などのセクションに区切って、原画と完成画が並べて展示されているのですが、どれだけ見ても見終わらないほどの作品数が展示されています。。特にASIAN KUNG-FU GENERATION関連のイラストは本当に数が多く、こんなに描いてたのか……と驚くこと必至。
これだけの物量を並べることで見えてくるのが、中村氏の画風の変化。華奢な女性の横顔やフラットな画面は初期から一貫して登場するモチーフですが、年月を経るごとに描き込みはより緻密になり、画面全体の情報量がどんどん増えていったことがわかります。中村氏の画風はインパクトが強いので、恥ずかしながら「ずっとああいう感じのイラストを描いている人」と思っていたのですが、年月の中でかなり密度感が変化している点には驚かされました。

そしてもうひとつ強烈だったのが、その原画の意外な小ささ。中村氏の作品はラフから線画までがアナログで、着色以降のプロセスがデジタルという手順。なので下絵となる線画は実物が存在しているのですが、この下絵の大きさが思っていたよりグッと小さい。だいたいA4の紙くらいの大きさに収まっており、実物を見るとそのサイズにギュッと濃縮された描き込みが行われていることがわかります。
また、興味深いのがレイヤーごとに下絵が起こされている点。メインとなる人物やモチーフとは別に、背景や特定のモチーフだけが別紙に描かれていることが多くあり、最終的にデジタル上でそれらの背景を重ね合わせることで緻密な画面が構成されていることがわかります。このあたりは、アナログとデジタルを行き来しながら作品を完成させるという作風ならではの見どころです。