【写真多数!】田んぼのまん中にポツンと神社がある理由とは? 写真家・えぬびいに聞く、今なお残る日本の原風景の魅力

撮影のタイミングが難しい
――秋の風景は、田んぼの黄色と神社が映えて見事ですね。
えぬびい:田んぼの中にある神社がもっとも映える季節が秋ですが、黄金色の一面を撮るのはかなり難しいんですよ。刈り取られていることも多く、桜同様にタイミングが難しかったですね。山形県尾花沢市の稲荷神社では、9月に蕎麦の花が満開になった風景を撮れました。蕎麦の花がこんなに花蓮でメルヘンだとは思わなかったですね。秋はいろんな花が咲いているのも醍醐味です。茨城県つくばみらい市の“神社”は、境内に柿の木が立ち、撮影に入ったらオレンジ色の実をつけていました。そうそう、この神社の名前は地元の図書館などでも調べてもらいましたが、最後まで名前がわからなかった点でも印象深いです。


――こういった神社は、誰が管理しているのでしょうね。
えぬびい:田んぼの所有者が維持しているパターンもありますが、氏神的として、地域全体で管理している例も多いと思います。管理していた方が亡くなったため、地域の人たちで数ヶ月に一回掃除を行っている神社もありました。過疎化や高齢化の影響で、そういう神社が増えているのでしょうね。福島県喜多方市の諏訪神社では、社殿のなかを掃除している場面に出会えました。社殿に鳥が巣をつくり、雛が巣立ったタイミングで、巣を除去していたのです。

――ほかに面白い出来事やハプニングはありますか。
えぬびい:惜しくも収録できなかったのですが、富山県高岡市の春日社から少し離れた神社で、真横にある家の方が話しかけてくれました。「ドローンいいね!」「せっかくなら、うちも撮ってよ!」と言われました。この地域は田んぼの中にポツンと家がある、いわゆる散居集落なのです。撮影した後に家に招かれると、その方は地域の自治会長。戦前、神社の前で氏子が30~40人集まった記念写真など、貴重な資料を見せてもらい、この土地の歴史も教えてもらえました。最後は里芋をいっぱいもらって帰りました。
――素敵な出会いですね。
えぬびい:後日、写真を贈ったら、印刷して家に飾るよと言われました。ぜひ、本ができたことを報告に行きたいですね。
ポツ神は日本の原風景だ
――本を読み、ポツ神こそが日本の原風景なのではないかと思いました。
えぬびい:田んぼも神社も日本に古来よりあるものですし、まさに原風景だと思います。廃墟など、暗めなものばかり撮影してきた自分が、郷愁的でさわやかなものを撮ることになるとは思わなかったです。そんなポツ神をこれだけ撮影した人もいませんし、世に出ていない新しい視点の本が作れたと思っています。
――ちなみに、今後も撮影の予定はあるのですか。
えぬびい:今年のゴールデンウィークも、11日間くらい撮影に出かけます。ポツ神は沼や池などの水辺や海辺にもあるのです。荒波が打ち付ける岩の上に社殿がある風景を、見たことがある人もいるではないでしょうか。田んぼが郷愁だとしたら、海は冒険というイメージで、迫力は海の方が大きいかもしれません。京都の北側からはじまり、鳥取、島根、山口を回り、その後は九州に入って熊本、鹿児島、宮崎、大分などを巡って、その後は四国や広島を撮影予定です。
――壮大な旅ですね。撮影は1人で行くのですか。
えぬびい:1人で行きますね。車中泊をしながら回る計画です。こんな撮影旅行には、さすがに他人を巻き込めませんからね(笑)。僕は10年くらい小旅行をしていますし、何より楽しくて撮影しています。今後も面白い風景の撮影は、継続していきたいと思います。
■書誌情報
『田んぼのまん中の ポツンと神社』
著者:えぬびい
価格:2,420円
発売日:2025年3月25日
出版社:飛鳥新社





















