アニメ『メダリスト』大成功の理由は? 原作とは違う“リアリズム重視”の演技シーン

アニメ『メダリスト』大成功の理由は?

原作のポテンシャルを引き出したアニメ『メダリスト』

  また、音楽もアニメ版独自の要素だった。原作の演技シーンでは、プログラムに使用されている楽曲の名前がしばしば示されるが、当然ながら音が出るわけではないので、読者は曲を脳内再生するしかない。

  それに対してアニメ版では実際に曲が流れる上、そのリズムに合わせた振り付けが披露されている。これによって、まるで実際にフィギュアスケートを観戦しているような気分を味わうことができた。

  音楽といえば、主題歌『BOW AND ARROW』の存在も忘れてはならないだろう。原作の大ファンだという米津玄師が手掛けたことにより、アニメ主題歌として稀に見るほど原作理解度が高い楽曲に仕上がっていた。この曲を聴いたことで、安心してアニメ版を楽しめたというファンも多いのではないだろうか。

  そしてストーリー構成も、アニメ版には特筆すべき点がある。原作は司といのりのW主人公という要素が強く、読者が同時並行的に2人の成長を見守っていく構成となっている。

  しかしアニメ版では、ストーリー序盤の司にまつわる物語を大胆にカット。彼のバックボーンが明かされるのは、中盤にあたる第6話「初戦の夜」でのことだ。原作では第1話の冒頭から司の過去とその心境が明かされていくので、大きな構成変更と言えるだろう。

  アニメ版の前半では主人公をいのり1人に限定し、その心情に寄り添う形で物語を進めている。それによって、視聴者が誰に感情移入してストーリーを追えばいいのか分かりやすくなっている印象だ。なるべく多くの人が物語に没入できるよう、こうした配慮が導入されたのかもしれない。

  原作の魅力をしっかりと理解しつつも、あえて別の見せ方を選び、“アニメならでは”の表現を追求してみせたのが同作の勝因。すでに第2期の制作も決まっているので、アニメ版から興味をもったという人には、原作を読みながら放送日を待つことをオススメしたい。

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