“全夫が震えるシリーズ”第3弾ドラマ『夫よ、死んでくれないか』 丸山正樹の原作小説との大きな違いとは?

オリジナルキャラを採用することで妻と夫の対立が際立ったドラマ版
「死んでくれ」というあまりにも過激なタイトルが話題となった同作だが、原作は草なぎ剛主演によりドラマ化された『デフ・ヴォイス』で知られる丸山正樹氏による小説(双葉社)だ。単行本での発売当時から「カバーなしでは読みづらい小説」として話題を集めていたが、冷え切った夫婦関係、離婚、モラハラ、出産と仕事……と結婚生活への悩みを抱える女性たちの姿を描きながら、彼女たちのまわりで起きた事件の真相に迫るサスペンス。麻矢の視点をメインに、身の回りの人全てがどんどん怪しく見えていく社会派ミステリーだ。
原作とドラマで大きく違うのは、小説では璃子が泥沼の離婚劇を経てシングルになっているのに対して、ドラマでは既婚者になっている点だろう。ドラマはそれぞれの主人公に夫が用意されていることで「3対3」の構図が際立っている。
物語はまだまだ序盤だが、その3人の男のキャスティングが見事だ。
光博役の竹財輝之助は同じく“全夫が震えるシリーズ”である『夫の家庭を壊すまで』で、見事「復讐されるクズ夫」像を確立。松本まりか演じる主人公・みのりの“ホラー”さながらの演技を真っ向に受け止め、アタフタと慄く姿が印象的だった。何やらすっかりと不倫のイメージが強いが、今回の第1話でもさっそく不倫を疑われ、そのうえ失踪までしてしまった。光博が見せる今後のクズぶりに期待がかかるところ。
第1話で”イヤ~”な演技が光っていたのは友里香の夫・哲也役を務める塚本高史。飲み会から帰宅した友里香に「どうだ? うまかったか? 俺の稼いだ金で飲む酒は?」と絡むなど、短い登場シーンではあるものの、ネチネチとしたモラハラ行為で視聴者に強い嫌悪感を与えた。
塚本といえば、20代の頃はイケメン俳優的なポジションで活躍していたが、40代になってからは体型をふっくらと変化させ、悪役や犯人役などが目立っている。第1話であわや殺されそうになったところで意識を取り戻し、記憶を失ったことで別人のようになってしまった哲也。第2話予告ではエプロン姿で家事をこなしていたりと、哲也と友里香のシーンは早くも波乱含みで目が離せない展開となっている。
高橋光臣演じる弘毅はドラマオリジナルのキャラで、外資系コンサル会社に勤めるいわゆるシゴデキ夫。だが、前述したように璃子へ愛情が過剰で、行動が微妙に気持ち悪い。ランニングマシンから降りたばかりの汗だくのTシャツのまま璃子に抱きつき「愛してるよ」と囁くシーンなどは、多くの女性視聴者がゾッとしてしまったのではないだろうか。
原作小説では、麻矢を中心に起きる事件の真相を解明していくサスペンス要素とともに、一番身近な存在である「夫」という存在を再度認識し直す「妻」の姿が描かれる。「元気なまま死んでくれないかしら」という何気なく呟いたブラックジョークが、見逃していた自分と、そして夫婦の関係を見つめ直すきっかけになっていく。
これに対してドラマでは、キャラクター間の対立構造がより際立って描かれている点が特徴だ。小説版の持つ心理的サスペンスの要素と、ドラマ版のエンターテインメント性の高い展開、それぞれの違いを比較しながら楽しむのも一興だろう。
双葉文庫版の帯には「私たちの『幸せ』はどこにあるのか。ラスト1行に震える!衝撃のミステリ!」と書かれているが、その通りラストに向けてミステリ色が濃くなっていく。過激なタイトルで1話から大きな注目を集めた『夫よ、死んでくれないか』。ドラマで次の展開が気になる視聴者は、原作小説も手にとってみてはいかがだろうか。























