『花ざかりの君たちへ』完結から20年を経たアニメ化の意義 男装女子×学園ラブコメの革新性

『花ざかりの君たちへ』アニメ化への期待

 中条比紗也による名作漫画『花ざかりの君たちへ』が連載終了後約20年の時を経てアニメ化される。本作は、2004年まで雑誌『花とゆめ(白泉社)』に掲載され、シリーズ累計発行部数1700万部を突破した学園ラブストーリーだ。憧れの人に会うため、アメリカ帰りの帰国子女が男装し男子校に転入するというユニークな設定と、クラスメイトに様々なタイプのイケメンが登場する点などが人気を博し、2007年と2011年にTVドラマ化もされている。

 本稿では本作の魅力と、当時革新的だった学園ラブコメ×男装女子という設定に関して取り上げたい。

自ら男装し男子校へ。その様は現代版シンデレラストーリー?

 手塚治虫の『リボンの騎士』のサファイア、池田理代子の『ベルサイユのばら』のオスカルなど、「男装の麗人」は過去の名作漫画において特別な存在感を放ってきた。こうしたキャラクターたちが男装した主な理由は、「生まれながら跡取り息子・王子として育てられた」というもの。自国のためや、男尊女卑の傾向が強かった時代背景の中で、自らの出生・身分を隠すために男装するケースが大半で、男装の麗人=「身分が高い」「ミステリアス」「実は悲劇のヒロイン」的なイメージがあった。

 ところが、『花ざかりの君たちへ』の主人公・瑞稀は、高跳び競技をやめてしまった佐野泉に競技復帰を説得するため、自ら男装し全寮制男子校に編入する道を選ぶのだ。その姿はまるで、普段は継母と姉からこき使われながら、森で出会った王子と再会するためにドレスアップして舞踏会へと向かった現代版シンデレラそのもの。自身の叶えたい夢のために男装を選んだ瑞稀に、サファイアやオスカルのようなミステリアスさや悲劇のヒロイン感はない。

 『花ざかりの君たちへ』の魅力やユニークは、主人公自らが男装女子になることを選択している点で、さらに「男装」がシンデレラストーリーを描くための手段となっている点なのだ。

相関図はイケメンだらけ! 学園ラブコメディ×男装女子が時代の潮流に

 『花ざかりの君たちへ』は、1996年から2004年まで女性向け漫画雑誌の『花とゆめ』に連載された。連載中の人気ぶりはもちろんだが、本作が社会現象的ブームとなったのは、2007年に放送されたフジテレビ系列ドラマ『花ざかりの君たちへ~イケメン♂パラダイス~』の大ヒットが大きな要因と言えるだろう。

 2007年のドラマでは、瑞稀役に堀北真希、その相手役となる佐野泉役には小栗旬、中津秀一役には生田斗真らが名を連ねていた。そして「イケメンパラダイス」というサブタイトル通り、他の寮生役には水嶋ヒロや岡田将生、木村了といった当時の若手俳優陣が脇を固めている。さらにドラマの宣材写真も、堀北演じる瑞稀を30人ものイケメン男子たちが囲む、まさに逆ハーレムなビジュアルが採用されていた。

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