『キャプテン翼』新シリーズは前代未聞の連載形式か? 高橋陽一が下した「物語を最後まで描き切る」決断

『キャプテン翼』で知られる漫画家の高橋陽一が、同シリーズの「雑誌連載」をいったん終了させ、“続き”は「ネーム」(ラフな絵とセリフの入った絵コンテのようなもの)の形で描き継いでいく、というプランを発表したのは、2024年1月のことであった。
その言葉通り、高橋は同年7月から、WEBサイト「キャプテン翼WORLD」にて、『キャプテン翼 ライジングサン FINALS』の「ネーム連載」を開始、現在にいたるまで、週刊ペースで順調に回を重ねている(2025年1月には電子書籍化もされている)。
限られた時間の中で「最後まで物語を描き切る」という決断
1981年、「週刊少年ジャンプ」にて連載開始した『キャプテン翼』は、“サッカーの申し子”大空翼とその仲間たちの成長を描いたビルドゥングスロマンの傑作である。1988年に一度連載終了するも、「ワールドユース編」(1994年~1997年)などを経てシリーズ化(掲載誌も、翼たちの成長に合わせて少年誌から青年誌へと移籍)。単行本の発行部数は累計9000万部を越えており、漫画界のみならず、現実のサッカー界にも多大な影響を与え続けている。
ちなみに「ネーム」とは、漫画家が作画に入る前に担当編集者に見せる、いわば「漫画の設計図」のようなものであり、本来は一般公開するようなものではない。
それでもなお、「ネーム連載」という前代未聞(だと思う)の連載形式に高橋陽一が踏み切ったのは、ひとえに「時間」の問題が大きいのだという。高橋の頭の中には、すでに『キャプテン翼』の最終回までの構想があるのだが、それをこれまで通りのペースで描いていたら、少なくとも40年はかかってしまう。ならば、ネームの形でもいいから、とりあえず物語を最後まで描き切っておこう、というわけだ(その他、近年の体力の衰えや執筆環境の変化なども、ネーム制作に専念することの要因として挙げている)。
いずれにせよ、作者の逝去や引退などで、中断してしまった人気作も少なくないなか、これはひとりの創作者として、正しい決断だといえるのではないだろうか。
『キャプテン翼』最終回で大空翼が対決するのは誰?
さて、くだんの『キャプテン翼 ライジングサン FINALS』だが、通常のネームとは異なり、「一般公開」を前提にしているためだろう――比較的、描き込まれた「絵」が入っている(“見せ場”のカットなどは、ほとんど「下描きレベル」といってもいいくらいだ)。これなら、将来的には、高橋自身がペン入れをしなくとも、彼の絵柄を学習させた生成AIなどを用いて、「完成原稿」の状態にまでもっていけるかもしれない(もちろん、最終的な“仕上げ”には人の手が必要だとは思うが)。
また、フキダシの中のセリフも、手書きの文字ではなく、編集者によって的確なフォント(書体)と級数(文字の大きさ)が指定されており、読みやすい。
こうなってくると気になるのは、高橋の頭の中にすでにあるという、『キャプテン翼』の最終回の構想だ。
ワールドカップの舞台で大空翼率いる日本代表が優勝するのは間違いないとして、おそらく物語の最後の最後に描かれるのは、翼と“S.G.G.K”若林源三の対決ではないだろうか。そもそもこの壮大なビルドゥングスロマンは、この2人の天才サッカー少年の対決から始まったといっても過言ではないのだ。ネームの形でもいいから、早くその“結末”を見てみたいと思っているのは、私だけではないだろう。






















