『キャプテン翼』ネーム連載という前代未聞の挑戦 ペン入れナシでも失われない魅力と新たな可能性を考察
1981年の連載開始から43年の長きに渡り愛され続けてきたサッカー漫画『キャプテン翼』(高橋陽一)が2024年4月4日発売の『キャプテン翼マガジン』vol.20で漫画連載という形での最終回を迎えた。
寂しさに駆られるファンも大勢いたことは想像に難くないが、そんな読者達を驚かす衝撃の発表が『キャプテン翼マガジン』誌上で行われた。なんと最終回を迎えた『キャプテン翼』の続きが、鉛筆書きのネーム形式の原稿で読むことができる『キャプテン翼WORLD』のサイト公開が開始されたのである。
前代未聞の挑戦、夢の続きが追える喜び
筆者が知る限り、恐らく漫画誌上初の試みである「ネーム形式」での作品連載。作者である高橋陽一先生は『キャプテン翼』最終話の構想まで頭の中にはあると公言されている。しかし、体力的な問題もあり、ラストまでの構想をこれまでのように漫画という形式で届ける場合、これから数十年も書き続けることになる。それは現実的に考えて難しいとの判断に至ったそうだ。
しかしネームという形であれば漫画ほど時間をかけることもなく届けることができると考えられたことから、この前例のない新たな試みがスタートしたようだ。
作品世界を脳内補完する楽しさ
筆者も早速ネーム形式で描かれた第1話を読んでみたが、キャラクターの表情やプレーの迫力がダイレクトで伝わり、正直に言って想像を超えるクオリティーで楽しむことが出来た。さらに小さいコマに各キャラクター達が割り当てられているシーンでは、それぞれキャラクターの名前が割り振られており、ネームだからこそ感じられる「味」がある。
古参のファンはネームを元に、ペン入れがされた完成原稿だったらこんな感じになるのでは?と脳内再生することもできるだろう。さらに、ネームを読みながら次の展開を想像していく楽しさも生まれる。
オリンピックを制覇し、それぞれのクラブに戻った主人公の大空翼をはじめとした選手達が今度は欧州トップクラブを決めるチャンピオンズリーグの舞台で躍動するのではないか。そしていよいよ大空翼の小学生の頃からの夢、ワールドカップを掲げるまでの闘いがはじまるのでは?等、今後のストーリーに思いを馳せる読者は少なくないはずだ。
そして、せっかくならこんなストーリーも描いて欲しいと妄想してしまうのもファンの性だ。個人的には大空翼の弟、大空大地がサッカーを始め、偉大な兄を追いかけて奮闘するスピンオフ的な物語を読んでみたい。
さらに作中の登場人物の中でも屈指の人気キャラクター、日向小次郎とソフトボール女子日本代表にも選ばれた赤嶺真紀との恋愛模様も1ファンとしてかなり気になっている。
猛虎の異名を持ち、試合中はガンガンと突き進み気迫を前面に押し出していくプレースタイルの日向だが、赤嶺と話している時は自分のペースを掴めずに翻弄されている、そんなギャップもたまらない。ぜひそのようなサイドストーリーも今後のネーム連載の中で描いてもらいたいものだ。