『梨泰院クラス』『ミセン』『ナビレラ』縦読み漫画「ウェブトゥーン」原作ミュージカル続々、人気の理由は?

韓国ウェブトゥーンのミュージカル続く理由

空間を大胆に見せるウェブトゥーンは舞台化に最適

 日本ではこの2月にも東京と愛知でミュージカル『ミセン』が上演される。天才囲碁棋士チャン・グレが、夢破れて社会人として大手商社に入社し、理不尽の多い社会生活にめげそうになるものの同期や先輩、上司とともに助け合い成長していくストーリーラインに多くの現代人が勇気づけられた作品だ。ドラマの中でも特に名セリフとして視聴者の心をつかんだ「とにかく踏ん張れ。踏ん張った者が勝つ。俺たちはまだミセン(弱い石)だ」に代表されるように、劇中では囲碁用語や、グレが棋士として培った経験が仕事へのマインドに生かされるシーンが数多く見られる。ミュージカルでは舞台上部のカメラから捉えたステージ面をバックスクリーンに映し出すことで、人々が交錯する様子が碁盤の上で動く石のように見えたそうだ(※3)。グレが実際に囲碁を打つ回想シーンが差し挟まれたドラマ版とはまた異なる趣向だが、たしかにこうした演出は、舞台であれば視覚効果を使って表現することもできる。だがドラマはどんなに大画面でもテレビサイズが限界だ。特に『ミセン』のようによく練られた人間ドラマの作品では、ワンカットの中で物語や視覚的要素が詰め込まれてしまうと没入感が削がれてしまう。舞台という大きな場所だからこそ、舞台装置の一つとして観客が楽しめるのだ。

 スマートフォンで縦にスクロールしながら読むことが前提とされているウェブトゥーンは、コマにセリフや人物のディテールを描き込むよりも、セリフを少なくし空間を大きく捉えてキャラクターを書いたり、カラフルな色彩や特徴のある効果音を乗せる方が読者の没入感を強めるとされている。ということはそもそも、実写化に向いたコンテンツであるのだ。さらに登場人物たちの感情を込めた歌は、ミュージカルだけが持つ最強のアイテムだ。セリフや大小道具以上に大きな表現力を持つ歌唱シーンは、原作で表現しきれなかったメッセージを、より増幅して観客の感情を揺さぶってくれる。

 舞台というスケールを生かした演出や俳優の躍動感で原作の枠を大幅に飛び越えることが、ウェブトゥーンのミュージカル化の大きなメリットなのかもしれない。今後隆盛を極めていくであろう、ウェブトゥーンミュージカルの世界。原作やドラマと一緒にぜひ楽しみたいところである。

参考

※1 https://m.edaily.co.kr/News/Read?newsId=01390726615868568&mediaCodeNo=257
※2 https://balletchannel.jp/37966
※3 https://engekisengen.com/genre/musical/103373/

関連記事

リアルサウンド厳選記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる