デヴィッド・リンチ、なぜ日本で高い人気に? “考察ブーム”の原点ともいえるミステリアスな作風

森氏はまた、日本における『ツイン・ピークス』ブームを支えた重要な人物として、エディターの故・川勝正幸氏と評論家の滝本誠氏の名前を挙げた。
「川勝さんは仕掛け人と申しましょうか、編集者として宣伝広報的な役割を担い、滝本さんは裏ボス的な理論的支柱として作品の魅力を伝えていました。当時はインターネットも普及しておらず、雑誌がトレンドを作っていましたから、この2人の存在はリンチ作品の日本での人気に大きく寄与していたと思います」
一方で、リンチを深く知るためには、どのような書籍を読むべきかという質問に対しては、いくつかの具体的なタイトルが挙がった。

「まずお勧めしたいのは、リンチ自らがキャリアを振り返った自伝『夢みる部屋』(フィルムアート社)です。4、5年前に出版された比較的新しい本で、リンチの世界観を理解する上で非常に役立ちます。また、滝本誠さんは『映画の乳首、絵画の腓』(ダゲレオ出版)や『きれいな猟奇 映画のアウトサイド』(平凡社)でもリンチに触れていますが、2007年公開の映画『インランド・エンパイア』に寄せて書かれた『コーヒーブレイク、デイヴィッド・リンチをいかが』(洋泉社)ではリンチに特化した内容が楽しめます」
さらに、雑誌『映画秘宝』の別冊『ツイン・ピークス究極読本 : 決定版』(洋泉社)や、キネマ旬報社の『フィルムメーカーズ7 デイヴィッド・リンチ』もおすすめだという。
デヴィッド・リンチの作品が日本で愛される理由は、そのミステリアスで考察を誘う物語性や洗練されたビジュアルとともに、映画雑誌、レンタルビデオ店の存在も当時のブームを下支えしたと言えそうだ。現在の考察ブームとも言える中、リンチの映画や書籍に触れることは新たな作品への気づきを得られることになるだろう。

























