世界中のマニアが大集結「まんだらけ」広報に聞く、訪日外国人に人気の作品と意外な売れ筋商品
■外国人はどんな品物を買っていくのか
――まんだらけは中野ブロードウェイの中にいくつもお店があり、それぞれ扱っている品物のジャンルが異なっています。外国人が関心をもつのは、どんなジャンルでしょうか。
中村:手塚治虫などのヴィンテージコミックを扱う「マニア館」は日本のマニアが顧客の中心なのですが、レトロな漫画やアニメのムック本を探されている外国人も来店されます。ロボットTOYを専門で扱う「スペシャル6」は、海外で日本のロボットアニメが昔から大人気だったので外国人の姿が特に多いお店です。ただ、このお店に来る方は欲しい物が明確なので、通常の観光客とは明らかに違うのがわかります。観光客の方が数万円するロボットを、お土産感覚で買うことはありませんから(笑)。
――確かに、数万円のロボットをお土産として買うには、ハードルは高いと思います。朱塗りの鳥居が並んでいる「変や」は、写真撮影スポットとしても人気ですよね。
中村:おっしゃる通りで、「変や」は鳥居が並んでいる雰囲気が外国人に受けて、記念撮影スポットのようになっています。SNSの映えスポットとしても人気が高いですね。昨年開店した京都店も、同じように鳥居を並べた空間にしています。
――ちょうど取材中にも紙袋を持った外国人とすれ違いましたが、みなさん、それぞれ購入しているものが違いますね。先ほどは、『呪術廻戦』など最新のアニメのフィギュアを手にした方を見ました。
中村:アニメに関して言えば、アジアや欧米はもちろん、今では世界中で日本とほとんどタイムラグがなく見ることができるので、最新の作品が人気です。『【推しの子】』や『呪術廻戦』や『SPY×FAMILY』は日本同様に人気ですよ。全世界的に人気がある作品と言えば、やはり『ドラゴンボール』や『セーラームーン』です。『セーラームーン』の海外での人気や知名度は、少女漫画発のコンテンツではナンバーワンかもしれませんね。
■まんだらけを訪れる外国人バイヤーは少ない?
――『仮面ライダー』や『ウルトラマン』などの特撮ヒーローはどうでしょうか。
中村:『仮面ライダー』と『ウルトラマン』は欧米での人気よりも、中国、香港、台湾、韓国、タイなどアジア圏に熱狂的なファンがいます。当店でも『仮面ライダー』の専門店(「スペシャル9」)があるのですが、やはりアジア系のコレクターが多く来店されますね。
――お話を伺っていると、外国人には漫画の単行本よりもグッズの方が人気なのでしょうか。
中村:よくマスコミの方に、「日本の漫画が人気で買っていく方も多いですよね?」と聞かれますが、基本的に海外の方は日本語が読めないので、漫画の単行本を買われる方はイメージされるより少ないと思います。今は人気作なら翻訳版を母国語で読めますし。当店で日本語の漫画を買う方は、読めなくてもオリジナルの単行本がどうしても欲しいという、原作ファンが多いです。漫画本よりも、日本語が読めなくてもビジュアル的に楽しめるアートブックや画集のほうが、当店での需要は高いと感じます。
――中野ブロードウェイは高級腕時計を扱うお店が多いことでも有名です。銀座や新宿の時計店やブランド品を扱うお店には、外国人のバイヤー、もしくは転売屋が多く見られます。まんだらけにはそういった人たちは来店されますか。
中村:海外では来日中の旅行客を募って、観光のついでに限定品のブランド品や腕時計などを買うアルバイトがあるそうです。ただ、当店で扱う商品の場合、買う方にもある程度の知識が必要です。中古品ですので、オリジナルか復刻か目利きをするのも品物の状態を判断するのも難しい。だから、ブランド品などに比べて転売目的の方は少ないと思います。
■ソフビは富裕層に人気。意外な人気は同人誌
――近年、まんだらけで売れているものといえばソフビが挙げられると思います。YouTubeでも佐田正樹さんやイジリー岡田さんが紹介していますね。今や世界的にコレクターが増えていると聞きます。
中村:創作ソフビ&アーティストTOYの専門店「スペシャル7」のお客様は、海外の方が中心です。秋葉原にあるソフビの専門店「CoCoo」も海外の方の比率がかなり高いお店です。BE@RBRICKなどハイブランドとコラボしているものやアパレル展開しているソフビアーティストの作品もあるので、ファッション好きやブランド品を購入する層とソフビの客層は重なる部分がありますね。お値段は高額なものも多いので、本当に好きな人がそれ目当てに来店される感じです。
――ソフビを爆買いする方も多そうです。
中村:自国で買うより日本の方が安いので、来日された機会にまとめ買いされる方も多いです。ただ、爆買いというよりは、ソフビコレクターは欲しいものが明確なので、買いたいものがある場合は必然的に購入する量や金額が多くなるのだと思います。ここ数年、ソフビの値段も上がっていますし、お金に余裕がないとできない趣味です。
――ファミコンソフトなどのレトロゲームはどうでしょうか。
中村:日本のゲームはもともと世界的に人気が高いので、世界中のコレクターが来店されます。ハードがあれば遊べますから、昔の作品も支持されています。Switchなどの最新のゲームソフトはインバウンドの方がお土産に、レトロゲームはマニア層に好まれる傾向があります。
――コミックマーケットなどの同人誌即売会にも外国人が増えていると聞きますが、まんだらけの同人誌の売上はどうですか。
中村:好きなジャンルや作品の同人誌を求めてコミケ期間中は多くの方が来日しますので、売り上げも増えますね。
■インバウンドブームを安易に追うことはしない
――お話を聞いていて思いますが、外国人にこれだけ支持される日本のコンテンツのパワーはすごいですね。
中村:そうですね。ジャンルが多彩ですし、それぞれのコンテンツや作品に熱烈なファンがいます。日本のオタクと同じようにライトな層もコアな層もいるのは、海外も共通していると思います。ただ、当店はどんなにインバウンドがブームだからといって、そこに焦点を当てた店舗展開はやりません。流行だけに乗っからない姿勢は、今後も一貫して守っていきたいです。
――極めて重要な方針ですね。実際、インバウンド狙いで流行りものを並べただけの店は、すぐ消えてしまう例が目立ちます。
中村:たとえば、人気YouTuberの影響でポケモンカードの知識や愛着もない方が、「儲かる」という理由でお店を出しても厳しいと思います。最初は売れても、人気が落ちた時に継続できるのか疑問です。流行っているものだけを安易に追随しない、というのは当社の指針です。
――それは、まんだらけの店頭に並んでいる商品を見ればわかります。いったい誰がこんなものを買うんだろう……と思うような、不思議な品物がたくさん並んでいますからね。
中村:今は少数のマニアしか注目してないものでも、本当に普遍性のある良いものであれば必ず市場で評価されるので、マニアの動向にアンテナを張っておくように……というのが、当社の会長の教えです。当社は今流行しているものだけを無暗に買い取り強化して、店頭に並べることはしたくないです。ブームになったものはいずれ下火になりますから。当社は日本人でも外国人でも、マニアックでコアな層の想いに応える店づくりを今後も進めていきたいと思っています。