『ブルーロック』己の存在価値を証明し続けるフィールドの支配者ーーミヒャエル・カイザーの“奇跡”

『ブルーロック』カイザーの光と闇

 世界一のストライカーを育成する為の特別施設「ブルーロック」に集められた300人の高校生FWたち。負けたら最後、2度と日本代表には招集されないという限界ギリギリ、崖っぷちの戦いが繰り広げられるデスバトルサッカー漫画が『ブルーロック』(原作:金城宗幸/漫画:ノ村優介)だ。

 ライバル同士での生き残りレースから闘いの舞台は進み、世界に誇るビッグクラブ、ヨーロッパ5大チームがブルーロックに集結。世界トップの実力を誇るスーパースターの指導のもと、新たなサバイバルデスゲームが開催される新英雄対戦(ネオ・エゴイストリーグ)が開幕。主人公、潔世一が所属することになるドイツリーグの雄「バスタード・ミュンヘン」で若くして頭角を現し、世界中のサッカーファンから期待を集める存在がドイツの若き皇帝、ミヒャエル・カイザーだ。

 スペインの名門「レ・アール」の下部組織に所属し世界にその名を轟かす日本サッカー界の至宝、糸師冴と同じく「新世代世界11傑」にも名を連ねているカイザー。神出鬼没のポジショニングからの正確無比なミドルシュートで相手チームに絶望を与える存在だ。

 そんなカイザーの口癖は「クソ⚪︎⚪︎」。作中でも「クソ下々」「クソ節穴」と、まるでチームメイトを愚民と罵る皇帝の如く、上から目線の物言いが目立つ。ただ、カイザーに限らず『ブルーロック』内での己の存在を証明する為の闘いにおいては相手を見下すような発言は日常茶飯事ではあるが…。

 また「ブルーロック」プロジェクト内で急成長を遂げている潔世一に対しても「自らを主役と勘違いした憐れな道化」と一蹴するシーンも作中では描かれており、個性的な選手ばかりの本作に置いても特に強烈な印象を残すキャラクターの1人だ。

オフ・ザ・ボールの動きが一級品

 カイザーのプレーの大きな特徴の1つがオフ・ザ・ボールの動きの秀逸さだ。試合中、ピッチ上でのカイザーはほぼ周辺視野でフィールドの情報をインプットし続けている。今、誰がどこに居て、何を選択しようとしているのか。その情報が常に更新され続けるカイザーの脳内は、さながらピッチを俯瞰で捉えているに等しい。それ故に最もゴール確率が高いポジションを取り、正確無比な必殺シュート「カイザーインパクト」に繋げゴールをもぎ取ることが可能なのだ。

 他の選手とは違い、一次元上の世界に到達している、それがミヒャエル・カイザーの凄さだ。

 実在する選手では「オフ・ザ・ボールの王様」と言われるトーマス・ミュラーが近い特性を持ち合わせているだろう。バイエルン・ミュンヘンで一時台を築いたミュラーは、ゴールへのルートを逆算し決定的なタイミングでベストな位置を選択しゴールを陥れることができる。

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