『ぼっち・ざ・ろっく!』に続く? 『ふつうの軽音部』『ロッカロック』が伝える、高校生バンドの熱さと楽しさ

高校生バンドの活躍を描く漫画が面白い

 ユルくてのんびりとした始まりから、だんだんと熱量が上がっていった『ふつうの軽音部』に対して、最初から熱量MAXなバンド漫画が、「週刊少年サンデー」で連載されていて、8月17日に単行本の第1巻が発売となった馬頭ゆずお『ロッカロック』(小学館)だ。

 中学校でバンド活動を始めてロックへの情熱を放ちまくっていた瀬良幸丸。卒業式では体育館でゲリラライブを敢行し、悔しい思いをしながら卒業していく仲間たちを鼓舞する。そんな超熱い幸丸が、高校に入ってすぐに同じような熱量を発散しはじめたかというと、バンド仲間が見つからず、軽音部も弱小で演奏する機会を見つけられなかった。

 そうした中、1万円で何でも請け負う一勝という名の同級生に興味を持った幸丸は、自分がライブで勝つところを見せるから、いっしょに音楽をやろうと一勝を誘い、創立祭のステージにひとりで立って、迫力のギタープレイとパワフルなボーカルを聞かせる。

 一勝の祖母が音楽に対して抱いていた忌避感も解消させた幸丸の演奏に刺激され、自分もステージに立って圧巻のボーカルを聞かせた一勝は、幸丸と組んでバンド活動を始める決意をする。幸丸や一勝による演奏シーンが実に躍動的で、絵なのに音楽が聞こえてくる気がして、のめり込ませる展開だ。

 音楽漫画というと「週刊少年サンデー」に連載された上条淳士の『TO-Y』が、スタイリッシュな描線で80年代バンドシーンの最先端を見せていた。これと比べると、『ロッカロック』は絵柄も展開も青臭くて泥臭い。現代で最前線を行く『ぼっち・ざ・ろっく!』のような可愛らしさからも遠い。

 だからといって、幸丸や一勝がかっこ悪いということはない。何かを始めたい、世界に爪痕を残したいと思っている少年たちが、失敗を省みないで突っ走る姿が読む人を引きつける。『ふつうの軽音部』のちひろも同じで、ルックスではなくバンドや音楽に向き合う姿が自分もそうなりたいと思わせる。

 バンドという形にこだわっているところも、熱量の源泉になっている。今は、デジタル機材で宅録した作品をネットで発信して有名になれる時代だが、幸丸は「バンドが揃った時の何でもできそうな感じ」を求める。バンドが持つ価値とライブに立つ意味を、『ロッカロック』や『ふつうの軽音部』が令和の時代に再認識させる。

 ライブには怖さもある。『ロッカロック』の第1巻から後のストーリーで、ライブハウスに立った幸丸と一勝が、満足のいくパフォーマンスを見せられない場面が登場する。『ふつうの軽音部』でちひろが陥った状況とも重なるエピソード。だが、どちらもそこからのリベンジがあって、逃げないで続ける大切さを教えてくれる。そこに誰もが引きつけられる。

 高校生バンド漫画で先行するはまじあき『ぼっち・ざ・ろっく!』(芳文社)も、アニメではぼっちちゃんこと後藤ひとりのコミュ障ぶりと本領のギターヒーローぶりのギャップで楽しませている部分があるが、原作漫画の方はなかなかどうして、リアリティを持ったバンドストーリーになっている。

 6巻まで出ている単行本では、曲作りや演奏力や歌唱力の向上、観客動員のための工夫など、バンドが大きくなっていくために必要なことがしっかり描かれている。『まんがタイムきららMAX』の連載の方は、ぼっちが所属する結束バンドが事務所と契約し、ライブも行うところまで進んでいる。バンド活動を始めた中高生が読めば、楽しみながらも何をしなければいけないかが学べる漫画と言えるだろう。

 ギターを買って軽音部に入ろうという動機を与えてくれる『ふつうの軽音部』。バンドを組んで演奏したい、歌ってみたいという気持ちにさせてくれる『ロッカロック』。自分を知ってもらいたいという欲望に触れさせてくれる『ぼっち・ざ・ろっく!』。これらの漫画に影響されて、バンドが続々と生まれてくるこれからの時代が、ロックにとっても豊かなものとなれば面白い。

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