梶裕貴 × カンザキイオリ 対談【前編】「“創作”は社会で生きていく術であり、命をかけているもの」

梶裕貴×カンザキイオリ対談【前編】 

梶「“二次創作”や“創作”に対する考え方にも、多くの共通点がある」

――表現や創作という部分では、梶さんはご自身の声を元にした音声合成ソフト「梵そよぎ」を軸にしたキャラクタープロジェクト「そよぎフラクタル」を展開していますよね。

梶:「そよぎフラクタル」には、カンザキさんにもコラボレーションという形でオファーをさせていただいて、これから一緒に色々な仕掛けを作っていけたらなと考えています。そもそも「そよぎフラクタル」は、自分ひとりだけでは生まれなかったであろうものを、様々なクリエイターさんや、それこそ読者さん視聴者さんと交わることで、新しい何かを生み出して行こうというプロジェクトです。そういった意味でいうと、先ほどお話したアフレコの話とリンクしているところもあるような気がしますね。自分自身で考え抜き、あらゆる準備をした上でスタジオに行く。

 けれど、いざ現場で心のやり取りをしてみると、思い描いていたものとは全く違う刺激をもらって、自分ひとりでは想像もつかなかったような表現が生まれる。それがお芝居の面白さだと思うんです。だからこそ、その魅力を知っている自分が、今度は"エンターテインメント"というもっと広い枠組みで波を起こして、それを世界中に広げていきたいという思いがあるんです。だからこそ、異業種の方とのお話は非常に面白いですし、勉強になりますし、今回のような機会は今後も大切にしていきたいと思っています。

――「梵そよぎ」は音声合成ソフトの一種で、カンザキさんの楽曲も元々はボーカロイドの「初音ミク」などで発表され、その後“歌ってみた”で多くの“歌い手”にカバーされていますが、二次創作や創作という行為についてのお考えをお教えください。

カンザキ:まず二次創作や創作に対する考え方ですが、二次創作は、個人的には一種の“愛”だと思っています。“好き”がないと、そもそも広まることはないので、二次創作があってこそ、「あ、自分愛されてるんだな」とか、「自分の作品を愛してくれたんだな」と感じられることがうれしいです。“創作”に対しては個人的な考え方として、私が社会で生きていく術であり、私が命をかけているものというイメージです。

――そんなカンザキさんは、梶さんの「そよぎフラクタル」にどんな思いで参加されたのですか?

カンザキ:断る理由がありませんでした。“自分の声”という、お仕事道具でありアイデンティティーでもあるものを今回のプロジェクトの軸にして、AIの方向性に展開した勇気もそうですし、何よりそのプロジェクトを、梶さんご本人が主体となって動いているということに感銘を受けました。規模の大きいプロジェクトのなかで作者本人が自分で動くということが、どれだけ大変でどれだけ過酷なことなのか、私は知っています。少しでも兼ねてからのご縁が、梶さんの人生になにかを与えることができればとてもうれしいと思い、今回参加させていただきました。

梶:ありがとうございます。本当にありがたく、うれしいお言葉をいただいてしまいました。今のところ、オファーから始まり細かいメールのやり取りを含め、全てのコラボ相手様に対して自分自身で直接連絡を取っているので、カンザキさんのお心遣いや想いはこれまでも感じてきていたつもりでしたが、やはりこうして直接いただくメッセージはとても胸に沁みますね。励まされますし、勇気をいただけました。“二次創作”や“創作”に対する考え方にも、多くの共通点があると感じましたし、改めて今回カンザキさんにご依頼をして良かったなと心から感じました。本当にありがとうございます。

――カンザキさんは今後、梶さんとどんな創作をいっしょにやってみたいですか?

カンザキ:私の中でまだ梶さんのことを、全て知りきれていないというところがあり、“著名な方”というイメージが先行して、どこか私が緊張してしまうところがあって。だから本音を言っても良いのであれば、ぜひ梶さんともっとお話ししたいと思いましたし、お友達になりたいと思いました。そのうえで梶さんの生き方から、吸収できる考え方や学びがあるかもしれないですし。創作は楽しいものでもあるべきですから、どこかスタジオに集まっていっしょに歌うとか、なんならいっしょにカラオケ行くのも一種の創作ですよね。まずはそういう気を張らない、ただ楽しいだけの創作を、もしよければいっしょにできたらうれしいです。

梶:もちろんです! カンザキさんさえ良ければ、ぜひとも行かせてください。今日、直接お話してみて、ますますカンザキさんに興味が沸きました。この素敵な笑顔と穏やかなお人柄のなかに、歌詞や小説から読み取れる様々な“人格”が住んでいるんだなと思うとゾクゾクします(笑)。とは言え人見知りの自分が、良い意味で、変に緊張せずにお話できたことに自分でも驚きました。それは間違いなく、カンザキさんの優しさのおかげなのだろうと思います。本日は、素晴らしい機会をいただき、本当にありがとうございました。まずは気楽にお食事にでも行きましょう。(カンザキイオリ × 梶裕貴 対談【後編】「人に愛がある限り自由なんて無い」に続く)

■関連情報
キャラクタープロジェクト「そよぎフラクタル」
https://www.soyogi-fractal.com/

■書誌情報
書名:『自由に捕らわれる。』
著者名:カンザキイオリ
仕様:四六判/並製/476頁
税込価格:1,540円(本体1,400円)
発売日:2024年8月23日
ISBN:9784309032054
URL:https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309032054/

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