『ヒロアカ』に続き『呪術廻戦』完結でジャンプはどうなる? 漫画編集者が語る「悲観しなくていい」理由

 「週刊少年ジャンプ」で連載中の『呪術廻戦』(芥見下々)が9月30日発売号で最終回を迎えることが発表された。

 大看板の『ONE PIECE』(尾田栄一郎)が最終章を迎えている中で、『僕のヒーローアカデミア』(堀越耕平)に続き『呪術廻戦』も誌面を去ることに。読者の間では「ジャンプが盛り下がってしまうのではないか」という懸念も見られるが、漫画編集者で評論家の島田一志氏は、「まったく悲観する必要はない」と見ているという。

 「確かに『ヒロアカ』と『呪術』は近年のジャンプを支えてきた大きな作品ですが、実は他の作品も充実しています。今後は『SAKAMOTO DAYS』(鈴木祐斗)や『逃げ上手の若君』(松井優征)が中心になっていくでしょうし、こちらもアニメ化が決定している『ウィッチウォッチ』(篠原健太)、『アオのハコ』(三浦糀)や『夜桜さんちの大作戦』(権平ひつじ)も好調。また、ジャンプは定期的に新たなスター作家を輩出しており、『チェンソーマン』の藤本タツキさんはジャンプ+で凄みを見せていたので“いきなり現れた”というイメージは薄いですが、『鬼滅の刃』の吾峠呼世晴さんも、そして『呪術』の芥見下々さんも予期せず登場し、漫画業界を席巻しました。心配しなくても、またブレイクして新たな柱になる作品が出てくるでしょう」

 新作で注目したいのは、『東京卍リベンジャーズ』の和久井健が4月に連載を開始し、“ライバル誌(週刊少年マガジン)からエース級の作家が移籍した”ことで読者を驚かせた『願いのアストロ』だ。

 「今考えると、『ヒロアカ』と『呪術』の完結を想定して、次の柱になることを期待した新連載だったと思いますが、個人的な見解としては、残念ながら今のところ『東リベ』ほどのインパクトは出せていないように見えます。しかし、あの和久井健が来たということで、ジャンプ作家陣には緊張感と刺激を与えているはずで、若い作家の目指すべき目標にもなっているでしょう。それだけでも誌面を活性化させる効果があると思いますし、また『東リベ』も連載開始直後にブレイクしたわけではないので、『願いのアストロ』も今後、大きく化けていく可能性が十分あります。注目していきたいですね」(島田氏)

 そして、今回の発表に際してファンの“呪術ロス”を低減したのは、同時に明らかになった『HUNTER×HUNTER』(冨樫義博)の連載再開だ。「異能を駆使した頭脳戦」が描かれることをはじめ、少なくない共通点を持つレジェンド作品の復活も、この時期を選んだものだっただろう。

 「漫画史的にいうと、山田風太郎的な集団異能バトルの最先端を走っているのが『呪術廻戦』であり、その発展・進化に大きく寄与してきたのが『ジョジョの奇妙な冒険』(荒木飛呂彦)や、他でもない『HUNTER×HUNTER』などのジャンプ作品でした。一時期、ジャンプは『鬼滅の刃』と『チェンソーマン』と『呪術廻戦』が同時に連載されているというとんでもない状況でしたが、前2作が誌面を去るなかで『呪術』が残ったことの功績は大きかったと思います。今回は大先輩の『HUNTER×HUNTER』がその役割を果たす、ということでしょう」

 いつの時代も読者は過去に「黄金期」を見出すものだが、現在のジャンプにはリアルタイムの読者である少年・少女を魅了する作品が揃っており、『ONE PIECE』と『HUNTER×HUNTER』が再び共存する誌面は、長く追いかけてきた読者にとってもワクワクするものだろう。ジャンプが大きな転換点を迎えていることは間違いないが、人気作が次々に完結していくことを悲観する必要はないのかもしれない。

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