『ちいかわ』ってそもそもどんな漫画? 映画鑑賞前に押さえたい、シュールすぎる原作の基本設定

『ちいかわ』ってそもそもどんな漫画?

 『映画ちいかわ 人魚の島のひみつ』が7月24日に公開され、初日から3日間の興行収入は22.4億円、観客動員数は150万人を突破した。2026年公開作品のなかでも『名探偵コナン ハイウェイの堕天使』や『トイ・ストーリー5』に匹敵する、異次元のロケットスタートである。

 『ちいかわ』と聞いて、多くの人が最初に思い浮かべるのは、小さく丸い姿をしたマスコットたちではないだろうか。ぬいぐるみやSNSスタンプ、企業コラボなどを通じてキャラクターの存在自体は広く認知されているものの、一方で「グッズは持っているが、実際の物語や設定までは知らない」という層も少なくない。

 原作となるナガノ氏による漫画『ちいかわ なんか小さくてかわいいやつ』は、2020年からXで連載が始まり、2022年にはテレビアニメ化も果たした。かわいらしい見た目が注目されがちだが、その物語には独特の設定が数多く盛り込まれている。

 公式に種族名は設定されていないものの、ファンの間では小さな住人たちを「ちいかわ族」と呼ぶことが多い。動物のような姿をしているが、人間のように働き、食事をし、それぞれの生活を送っている。ただし、全員が同じように言葉を話せるわけではない。物語の中心となるのは、ちいかわ、ハチワレ、うさぎの3人組である。ちいかわは「わぁ…」「えッ?」「う~ん」といった短い言葉で感情を表す場面が多く、うさぎも独特の掛け声が中心だ。一方、ハチワレは流ちょうに会話し、出来事を整理して仲間に伝える役割を担っている。また、ラッコやモモンガ、シーサーなども自然に言葉を交わしており、話せる者とそうでない者が混在している点も、この作品ならではの特徴と言えるだろう。

 彼らは草むしりや討伐、採取などの労働で報酬を得て生活している。この労働の仲介や報酬の支払いを行っているのが、甲冑を身にまとった「鎧さん」という人間らしい種族だ。彼らは店を営業したり仕事を配給したりと、生活の基盤を支えている。草むしりには検定制度があり、取得した級によって作業範囲や報酬が変わるのだが、ちいかわはハチワレと一緒に草むしり検定を受験したものの不合格となり、ハチワレだけが合格したエピソードも描かれた。かわいらしい絵柄の中に、努力や挫折、悔しさや気まずさまで盛り込まれているところが印象的である。

 また、ラッコは討伐ランキング上位の実力者として知られ、シーサーは難関資格「スーパーアルバイター」を取得して憧れだったラーメン店で勤務。さらに、くりまんじゅうは飲酒に必要な資格を持ち、酒を飲むにも許可が必要という独特のルールが設けられている。このあたりにも、かわいらしい見た目との落差を感じる人は多いはずだ。

 こうしたシビアさに加え、不条理なミステリー要素も作品の魅力を深めている。なかでも異彩を放つのが、傍若無人に振る舞うモモンガだ。『ちいかわ』の世界には魔女が存在し、怪物「でかつよ」との身体の入れ替わりが示唆されている。愛くるしい容姿の裏に見た目だけでは判断できない秘密が隠されている構造も、子どもだけでなく大人までが惹きつけられる要素と言えよう。

 ディズニー並みとも称される市場規模へと発展した背景には、キャラクターの愛らしさだけでなく、細部まで作り込まれた奥深くもシュールな設定がある。映画をきっかけに作品を知った人ほど、原作に触れることで、見た目だけでは分からないストーリーの魅力に気づき、作品の虜になるはずだ。

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