インフレしがちなバトル漫画の「数値化」、連載当初から完結まで有効に機能させた作品は?
数多くのバトル漫画が取り入れつつも途中で姿を消す設定が、「強さの数値化」。『ドラゴンボール』においてはフリーザの「戦闘力53万」が有名だが、その後、戦闘力について作中で触れられなくなっていった。
そんな中、作品の冒頭から完結まで戦闘力をうまく数値化したのが『トリコ』の「捕獲レベル」だ。なぜ数値化の継続が難しいのか、数値化を取り入れた作品を基に考えていきたい。
まず、『トリコ』の捕獲レベルは、獲物を仕留める難度を示したものだ。捕獲レベル1の猛獣は猟銃を持ったプロのハンターが10人いて仕留められる程度とされているが、生息地や特有の生態も加味されている。
例として挙げると、単行本2巻にて登場したフグ鯨は、一切戦闘をしていないにも関わらず、ノッキング(活け締めのようなもの)の難度と毒袋を取り出す特殊な調理が必要なことから捕獲レベルは29を誇った。このことからも、捕獲レベルが戦闘力以外を加味していることをフグ鯨で示した。
作中初めてのターゲットである、ガララワニの捕獲レベル5。わずか10話程度で、フグ鯨の29まで大幅に捕獲レベルが上昇したため、インフレしていくかに思えた。しかし、その後登場する獲物の捕獲レベルは緩やかに上昇。グルメ界に入るとまた大きく上昇したが、最終的にはラスボス・ネオの捕獲レベル22,000で落ち着いた。
対して、初めて数値化が導入された漫画作品と噂されるキン肉マンはどうだろうか。物語中盤、敵対組織の強大さを表すためか、超人パワーという数値が登場した。キン肉マンらアイドル超人が100万前後なのに対し、その10倍となる1000万の力を隠していたバッファローマンには驚きを隠せなかった読者も多いだろう。
超人パワーはあくまで「力の強さ」を表したもの。技の技術力や威力は加味されておらず、超人パワーが低いほど素早く動けるという設定もある。超人パワーの登場によって、バトルに幅が生まれ、面白さを深める役割を果たした。
だが、100万前後から始まった超人パワーは、終盤には1億まで膨らみ、敵との差が開きすぎても勝利できることから、一部の読者からは批判的な声もあげられている。