ドラマ化で話題『彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる』はどのように生まれた? GLコミック新時代の旗手・Sal Jiangインタビュー

【漫画】『あやひろ』著者インタビュー

 国内外問わず百合ファンから絶大な人気を誇り、GLコミック新時代の旗手として注目を集めているSal Jiang(サルチャン)先生。そんなSal Jiang先生の代表作の一つである『彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる』の実写ドラマが現在MBSにて絶賛放送中だ。絶対に諦めない後輩×絶対に落とされない先輩で話題沸騰中の“じれキュンGL”。果たして本作はどのように生まれたのか? Sal Jiang先生のマンガ家としての歩みを振り返りながら、創作の裏側、そして作者本人も太鼓判を押すドラマの見どころについて話を伺った。(ちゃんめい)
*取材は2024年6月末に実施

『彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる』第1話を読むには画像をクリック

「2ちゃんねる」にマンガを投稿!? 知られざるマンガ家としての歩み

『彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる(1)』

――『彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる』ほか、『白と黒 ~Black & White~』や短編集『SAL』などで話題を集め、GLコミック新時代の旗手として注目を集めていらっしゃるSal Jiang先生。そもそも、どのような経緯でマンガ家になったのかお伺いしてもよろしいですか?

Sal:ターニングポイントとなった出来事はいろいろありますが、その一つが実は「2ちゃんねる」なんです。今から8年くらい前、「ちょっと百合マンガを描いてみたんだけど見てくれ」みたいな感じで自らスレを立てて作品を投稿したことがありまして。

――出版社のマンガ賞や新人賞に投稿するのではなく「2ちゃんねる」に!?

Sal:それまで自分が描いた絵を人に見せたことがなかったので、人から評価を受けるのであればまずは一番辛辣なコメントが来そうな場所に出すべきだと。当時はそんな挑戦心から「2ちゃんねる」に投稿しました。きっとものすごくこきおろされるんだろうなと構えていたら、意外にも「良いんじゃない?」って好意的なコメントをくれる方や、「ここに応募してみたら?」って親切にマンガ賞の情報を貼ってくれる方がたくさんいて。他にも「もうちょっと裸描いてくれ」とリクエストされたから、それに応えてみたら「おい、筋金入りだな!」と突っ込まれたり(笑)。もちろん「こんなことしてないで勉強しろよ」とか否定的なコメントを書く人もいましたけどね。

――『電車男』のクリエイター版みたいですね。「2ちゃんねる」がなければSal先生は世に出なかった可能性があると……。

Sal:かもしれません。でも、「2ちゃんねる」で褒められたからと言って、じゃあマンガ家になろうと具体的に行動を起こしたわけでもなく。そこからは学業に専念して留学したり、卒業後は営業マンとして働いたり。絵から離れていた時期もありましたが、その後「COMITIA」への参加や、出版社からお声がけいただいたのをきっかけにマンガを描いて……という感じですね。

担当編集・堀江:Sal先生は昔からマンガ家を目指していたわけでも、熱心にマンガを読み続けてきたタイプでもなく「マンガを描いたら描けてしまった」という珍しいタイプだと思います(笑)。でも、Sal先生の創作スタイルは初期からずっと変わっていないように感じます。実は先ほど仰っていた「2ちゃんねる」のスレのログを見つけて読んだのですが、その当時からSal先生は自分の好きなシチュエーションを絵にしているなと。求めるられると、多少サービスすることはあれど、自分の好きなものや描きたいものに重点を置いて、それに向けてストーリーを作っていく……。この姿勢はずっと変わっていない部分かと思います。

全ては「シチュエーション」から始まる

――『彩香ちゃんは弘子先輩に恋してる』はどのようにして生まれたのでしょうか?

Sal:Twitter(現:X)にアップしたマンガを双葉社さんの初代担当さんが見つけてくださって、連載してみないか? とお話をもらいました。アップしたマンガはもう完全に趣味で、「こういうシチュエーション好きだな」と自分が思ったものを描きました。生まれてこの方女性しか好きになったことがない……でもそれを周囲に隠している経験豊富なお姉さんが、急にノンケに迫られる状況ってかわいいなって。観測者としてのちょっとした思いつきみたいなものですね。

――「シチュエーション」は先ほど担当編集の堀江さんも仰っていたキーワードですが、Sal先生にとって作品を生み出すために重要なもののように感じます。

Sal:そうですね。基本的に自分が描きたいと思うときって、一番最初にコマや見開きのようにバンっとしたビジョンが浮かぶんです。その様子を「アピールしてる人」「照れている人」みたいに言語化して、さらに膨らませていく。シーンから逆算して肉付けしていくような作り方なので、シチュエーションというか思い付きから始まっているような感じです。

 実は、『白と黒 ~Black & White~』のときも「これ描きたい!」って感じでバーっとプロットだけ描いて。その後に「こういう話を描くにはどうしたら良いですか?」「冷静かつ、自分は仕事ができると自覚を持っている人たちが集まる組織ってありませんかね」と、当時の担当編集さんにほぼ丸投げみたいな感じで相談しました(笑)。そうしたら、当時の担当編集さんがなんと元銀行員の方で! もうお気づきかと思いますが、『白と黒 ~Black & White~』の細かい設定や業務内容などは、その方の経験がベースになっています。

――物語の舞台が大手銀行という設定にそんな裏話が! ちなみに、Sal先生が思いつくシュチュエーションの数々は何が源泉となっているのでしょうか? 創作において影響を受けたものがありましたら教えてください。

Sal:先ほど堀江さんも言っていたように、私はマンガやアニメに影響を受けたタイプではなく。どちらかといえば、映画、特に洋画や海外ドラマから受けた影響が強いんです。洋画や海外ドラマって、急に殴り合ったり、銃で打ち合ったり、かと思えば急に愛や欲望をぶつけ合ったり、全体的にジャンキーなシーンが多いんですよね。そういった作品を観て「ここ好き!」って興奮したシーンが色々と混ざりあって作品に活きているように思います。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる