竹中直人 × MEGUMI、昭和の名優エピソードを語る 松田優作に言われた一言とは?

竹中直人×MEGUMI、昭和の名優エピソードを語る

松田優作との思い出

 その他にも蛭子能収、緒形拳、萩原健一、原田芳雄、内田裕也、岸田今日子、丹波哲郎、坂本龍一、中島らも、横山やすしなど錚々たる人物の思い出があるという竹中。晩年の五社英雄監督の家に呼ばれたときには、監督が突然服を脱ぎだして驚いた経験もあるという。監督は「もう死ぬから見てほしかった」と、首から尻にかけての入れ墨を見せてくれたそうだ。また、脚本とは全然違うアドリブで演技する森繁久彌との緊張感あふれる現場の話も、観客たちの興味を引いていた。

 松田優作についても、元夫人の松田美由紀も認めるモノマネを交えながら回想。とある打ち上げ会場、本人の前で『太陽にほえろ』の名シーンのモノマネをしたところ「なめてんのか?」と見降ろされながら凄まれてしまったという。竹中は「なめてないです……」と弱気に答えたのだが、松田はそんな竹中の手を取って一言、「ずっと見てました。愛してます」と言ってくれたそうだ。これにはMEGUMIも感嘆の声を上げる。竹中も錚々たるスターたちに対して「破天荒で生々しかった。CMだとかスポンサーのこととか、好感度を気にするような次元ではなかったね」としみじみ振り返った。

フィルム撮影時代の現場

 終盤には長めの質疑応答も。竹中の魅力について、MEGUMIが「ストレートに表現なさるのが眩しくて、若い子たちも『何か一緒にやりたい』って思える。そしてたまに見せる自信のなさもキュート。このふたつがポイント」と表現。竹中は「何かを作りたい気持ちは常にある」と自らのクリエイティビティについて話し、初めて8㎜フィルムで病弱だった母親が退院する様子を撮影した過去などを振り返った。

 さらに竹中は、フィルム撮影時代に想いを馳せる。「35mmカメラの横にたくさんのスタッフが集まって、監督の『本番!』という声に続いて全員が芝居を見つめる。それがドラマティックだった」。デジタルが主流となった現代と違い、現像できるまで何が映っているかわからない、その不便さが創造や連帯に繋がっていたのかもしれない。さらに「今は今で便利ですが、変わらないものもある。テイクを重ねるより『本番!』と言われた瞬間をただ切り取ることだけは自分の心で守っていきたい」と重ねた。

 これに対してMEGUMIは「フィルムで撮っていたのは本当にすごい。若い子では知らない場合も多いので、竹中さんから聞いたことを我々世代が伝えたいです。その方が、仕事の魅力をより一層深く感じるのではないかと思うので」とコメント。演技や作品に対して真摯に向き合うふたりだからこその、温かく深みのあるトークイベントとなった。

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