「響け!ユーフォニアム」黒江真由の“真意”とは? 待望の新刊で明かされる過去

「響け!ユーフォニアム」黒江真由の真意

 武田綾乃が高校の吹奏楽部を舞台に描いた小説「響け!ユーフォニアム」シリーズに待望の新刊『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のみんなの話』(宝島社文庫)が登場した。吹奏楽部を"卒業”した主人公の黄前久美子たちが卒業旅行に行く中編や、誰が久美子たちの次の部長になるかが描かれたショートストーリーなどを収録。久美子の3年次に登場したキャラクターで、TVアニメ『響け!ユーフォニアム3』でも“争点”となっている黒江真由に関するエピソードもあって、何者なんだといった論争を巻き起こしているその“正体”に、原作の立場から改めて迫ることができる。

 黒江真由がいる。6月27日に発売となった『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部のみんなの話』のアサダニッキによる表紙絵を見て感慨を覚えた人も多いだろう。黄前久美子と加藤葉月、川島緑輝、そして高坂麗奈の"北宇治カルテット"に真由も加わっていることが、全日本吹奏楽コンクールの後もしっかりと吹奏楽部の仲間として認められている表れだからだ。

 6月23日にTVアニメ『響け!ユーフォニアム3』の第十二回「さいごのソリスト」が放送され、そこで真由は、コンクールの全国大会でユーフォニアムのソリを主人公の久美子と競い合う立場として登場した。前後編で出た小説『響け!ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、決意の最終楽章』(宝島社文庫)と立場は同じだが、その後の展開や結果に大きな違いがあったことが、原作を読んでいた人たちを驚愕させた。

 原作を読んでいない人も、違いがあると知っていろいろと考えた様子。TV放送に続いてネットでの配信が始まったあたりから、SNSのトレンドに「黒江真由」が上がるくらいの喧噪を巻き起こしている。小説や漫画をドラマやアニメとして映像化する際の"改変”が話題になっていることもあり、原作者の武田綾乃が放送直後にコメントを出してすべて了解していることを訴えた。今はとりあえず、もうひとつの『決意の最終楽章』として捉えようとする雰囲気になっている。

 ただ、ふたつの解釈が出てきた場合、どちらがより妥当なのかを考えたくなるのが人情だ。TVアニメに準拠した場合、原作における久美子のユーフォニアム奏者としての実力なり、真由のどこかつかみどころのない性格の裏側が、やはり気になってしまう。そこで、『決意の最終楽章』を読み返すと、久美子は全国大会に向けたオーディションで、しっかりと実直を発揮できる心情なり環境に至っていることが伺える。先輩の田中あすかを訪問してアドバイスをもらい、相思相愛の塚本秀一からも励ましを受けて気持ちを立て直し、全霊を込めてオーディションに臨んだことが伺える。

 真由は違ったのか。その答えになりそうな言葉が、『北宇治高校吹奏楽部のみんなの話』の中で示される。「~幕間・グラーヴェ~」と題されたエピソードには、久美子の後輩で同じユーフォニアムを吹いている久石奏が、全国大会に臨むメンバーを決めるオーディションの後、真由に「オーディション、どの程度本気だったんですか?」と問い直す場面が登場する。真由は常々口にしてきた「久美子ちゃんを応援したいっていう私の本音は、無視されちゃうの?」という言葉を改めて持ち出し、そうした意識が演奏の"熱量"にどう現れるかも告げて、結果への満足感を示す。

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