『春場ねぎ短編集』『どくだみの花咲くころ』『呪文よ世界を覆せ』 ちゃんめい厳選!5月のおすすめ新刊漫画

ちゃんめい厳選!2024年5月の新刊漫画

『呪文よ世界を覆せ』ニコ・ニコルソン

 令和のいま、空前の「短歌」ブームが起きているそう。確かに、最近X(旧Twitter)のタイムラインを眺めていると現代短歌と出会う頻度が高い。31文字という短い文字数ながら、自分だけがこんなことを思っているんだろうな......と、燻っている感情や感性がズバッと言い当てられたものと出会うと、何だか自分の心を確かに感じられ、小さな光を掴んだような気持ちになる。『呪文よ世界を覆せ』の主人公・虎屋も、まさにそんな光を「短歌」から見出す。

 相方だけがブレイクして自分だけ取り残されてしまった、売れないお笑い芸人・虎屋戸太郎。仕事もプライベートもどん底に叩き落されたある日、「短歌」を愛してやまない女性・多悠多と出会う。

 彼女との出会いをきっかけに、初めて「短歌」の世界に触れた虎屋。自分には関係のない世界だと思っていたけれど、いざ歌集を手に取ってみると、自分の不甲斐なさや悔しさ、でも誰かを笑わせたいし、芸人の道を諦めたくない.......短歌はたった31文字で自分の全てを照らし出す。まさに、“呪文”をくらったかのような衝撃を短歌に感じるのだ。

 そこからまたがむしゃらにお笑いを頑張ってみたり、かと思えば多悠多に「短歌」を習ったり。なんだか騒がしくて危なっかしい虎屋だが、短歌とお笑い、どちらも“言葉”を扱う芸術だ。似ているようで全く違う2つの芸術が出会い化学反応が起きた時、虎屋はどんなステージを見せてくれるのだろうか。「短歌」の入門書としてはもちろん、彼の再起ストーリーから目が離せない。

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