『シティーハンター』鈴木亮平が撃ちまくる、ガンアクションの魅力 凄腕スイーパー・冴羽獠を凌ぐ身体能力
■見せ場となるスピードローダーの使用シーン
『シティーハンター』でのリロードシーンも、見せ場のひとつだ。もっとも、本作の獠は一発づつ再装填するような手間はかけず、6発全部を一気に再装填できるスピードローダーという器具を使っている。このスピードローダーを使うシーンは数回あるが、まずユニオンの戦闘員との銃撃戦の中(「プランCだ」というセリフのあるあたり)ではスピードローダーを使う手元にカメラが寄り、「見たことないかもしれませんが、こういう便利な道具があるんですよ」「これを使うと素早くリボルバーに弾を込めることができますよ」という点を説明している。
ちなみにこのスピードローダー使用シーンでは、素早く手首を返すことでスイングアウトしたシリンダーを銃本体に戻す動作も収められている。パーツに負荷がかかるので本来ならばやらないほうがいい動作なのだが、この手首のスナップでシリンダーを戻す動作はアニメの『シティーハンター』などでもよく見られた。リアルさ一辺倒ではなく、映え重視の動作をほどよく取り入れているのも、実写版『シティーハンター』のアクションである。
というわけで、ここで「スピードローダーという道具がある」ということをきっちり説明してしまっているので、それ以降は獠がどれだけ高速でリボルバーをリロードしようが、「スピードローダーを使ったから速い」ということにできるのがこの作品の上手いところである。
スピードローダーに関する事前説明が活きてくるのが、終盤、獠が防弾ガラスに向かって何発もパイソンを発砲するシーンだ。このシーンの獠は「6発撃ち尽くしたらすぐ次」という感じで何発も防弾ガラスに銃弾を撃ち込んでおり、射撃ペースの速さからも獠の怒りが伝わってくる。そしてさらに強く獠の感情を伝えるためには、発砲とリロードの間に演者である鈴木亮平の顔も同じフレームに収まっている必要がある。
ということで、このシーンで鈴木亮平は「顔のすぐ前でパイソンのシリンダーをスイングアウトさせ、素早く薬莢を抜いた後にこれまた素早くスピードローダーをつっこんで弾を込め直す」という動作をおこなっている。この動作、言うのは簡単だけど実際にやるとなるとかなり大変で、0.5倍速で動きを細く追ってみるとスピードローダーを差し込む左手がけっこう辛そうな角度になっている。「そこまでやってでも獠の怒りと、怒りに溺れない正確なテクニックを見せなくてはならない!」という作り手側の思いがあればこそのシーンだろう。
このほかにも「ほどよくプロっぽく、ほどよく弱そうなユニオン戦闘員の全滅特殊部隊感溢れるアクション」とかについても書きたいところではあったのだが、それをやると原稿の分量が倍くらいになってしまうので、こちらはまた別の機会に。とにかく地に足のついた納得感と獠のキャラクター性、さらに『シティーハンター』らしい荒唐無稽さが絶妙なバランスで織り交ぜられた本作のガンアクションは、鈴木亮平の身体能力と器用さ、銃器類を揃えアクションを設計したスタッフの熱意、そして『シティーハンター』という作品への愛あってのものだろう。まさに冴羽獠のような、プロフェッショナルの仕事なのである。
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