【漫画】子どもが欲しいかわからない……37歳・子ナシ主婦の悩みを描いた漫画 作者に聞く創作への思い
ーー本作には、子どもをもつ専業主婦が登場していませんが、その意図をお聞かせください。
大町:本書を手に取ってくれるであろう読者は、子どもが欲しいかわからないと思っていると思います。すでに子どもがいるキャラクターは1人登場させようとは思っていましたが、やはりキャリアなどの兼ね合いで悩ませたいという考えがありました。
専業主婦という点で言えば、主人公カナコの母親が近いでしょう。母親の世代は女性の役割が固定化しており、疑問を持つことなく出産して子どもを育てています。そして、苦労しつつも幸せだったと言っています。
現代では、子どもを産むことで、数年は働くのが難しくなるといった悩みが付き纏います。いつ産んだらいいのか、というタイミングの悩みは多くの女性が経験していると思います。
ーータイミングといえば、カナコが妊活を始めるタイミングで、卵子老化や流産率についての現実を突きつけられて心が痛くなりました。友人マリカも不妊治療でしたが、彼女はすんなりと妊娠/出産しています。この対比も印象的でした。
大町:漫画では主人公に1番苦労させるものなので…(笑)。それはさておき、周囲が順調だから自分も同じようにどうにかなるだろうと思っていたら全然うまくいかなかった、なんてことは妊活に限らずあらゆる局面で発生します。
実は私もタイミング法で何回か挑戦したのにうまくいかなくて、とても辛い時期を過ごしたことがありました。なのに友人は次々に妊娠/出産して。漫画でも書きましたが、インスタにあがってくる子どもの写真を見て「いいね」を押せなくなったことがあります。そんな自分を客観的に見て、たとえ私にできなかったとしても、できた友人らから「あの人は子どもができなくてかわいそうだから子どもの話をするのはやめておこうか」と気を遣われる関係にはなりたくないとも思いました。「あの人は欲しかったけどできなかった。でも幸せそうに生きているから、私の幸せ話も聞いてくれるかな」という気持ちで接してもらえる人間になりたいって思ったのです。
そんなふうに生きるためにはどうすればいいのだろう、と私自身が考えていたので、主人公のカナコにも悩んでもらいました。
ーーそんなカナコの悩みに一石を投じたのが、セレブの彼氏との生活が気に入っていて、結婚も子どもも望まないハルミですよね。ハルミは、「ご自愛」が足りないと人の幸せを喜べない、と言っています。
大町:ハルミは、パートナーの意思を尊重して結婚も子どもも望んでいません。しかし、それをパートナーのせいでそういう人生になってしまったのだ、というふうに責任の所在をパートナーにあると思わないから幸せな人生を送れるのだと思います。
自分が人生に何を求めて、どのように生きたいのか理解しているなら、他人の人生を妬むこともないし、人の出産も喜べる。ハルミは優しくて強い人だと思っています。
ーー私はハルミの人生を応援しているし、幸せになって欲しいです。子どもを持たない人生を選択した場合を想像することがありますが、ハルミのように強く生きていたいと思いました。選ばなかった方の私の人生をハルミに投影しながら読みました。
大町:そうですね。私とは違う人生ですし、唯一出産に対して前向きに行動しないキャラクターですが、ハルミには幸せになって欲しいです。
ーー『子どもが欲しいかわからない』が発売されて数日経過しましたが、読者からはどのような感想が届いていますか。
大町:私自身子どもがいるので、出産に対して肯定的に書いていると思います。それでも、「わからない」感情をテーマにした本作に、「好意的に書いてくれてありがとう」といったメッセージを下さる読者さんがいるので嬉しく思っています。
みんな誰かの子どもとして生まれてきている以上、出産を頭から否定することは難しいと考えています。否定でも肯定でもなく、「わからない」のならポジティブに考えてみてもいいのでは、という気持ちで書こうと思っていたので、それが伝わってくれたらありがたいです。
次回作は夫婦にまつわる物語です。期待して待っていて欲しいです。