『ドラえもん』出会いと別れの季節に読みたい名エピソード! あらためて振り返る「さようならドラえもん」
ケンカの翌朝、のび太が起きるとドラえもんの姿はもうなく、机の引き出し(タイムマシーン)が開きっぱなしになっていた。のび太はドラえもんの不在に起きてすぐ気づくが母親から聞かれても平然を装う。その後、1人部屋に戻ってから「すぐになれると思う。だから………心配するなよドラえもん」と呟くのだ。
ドラえもんのいないことへののび太の寂しさが伝わってくるセリフだが、彼の表情は穏やかな笑顔と対照的で、ストーリー冒頭のように泣き喚いたりはしない。まったく別人のような表情でエンディングを迎えるのだ。大切な友との別れと子どもだった自分との別れ、ラストシーンの表情には、幼少期ならではの2つの別れを象徴しているともとれる。
原作コミックの7巻にはこの「さようならドラえもん」の対となるエピソード「帰ってきたドラえもん」が収録されており、のび太は再び「泣き虫」キャラに戻るのだが、それまで自分のことでしか泣いてこなかった彼が、ドラえもんに関することで「悔し涙」や「嬉し涙」を流す様子は、まさに1人の少年の成長を描いた濃厚なヒューマンドラマだ。
ドラえもんにはこの他にも「のび太の結婚前夜」「おばあちゃんの思い出」といった名エピソードが存在する。出会いと別れの季節、春。今一度、童心にかえって名作漫画を読み返してみるのも面白いかもしれない。