油断、毒、冬の気候……『葬送のフリーレン』で冒険者たちの命を奪った“死因”を考える

『葬送のフリーレン』冒険者たちの“死因”を考える

 勇者一行により魔王が討伐された世界の”その後”を描き、アニメ版も大ヒットを記録しているファンタジー漫画『葬送のフリーレン』。その世界には危険な魔物や魔族が存在する。人間を襲ったり捕食したりと害をなす存在であり、それらによって亡くなる冒険者も少なくはない。しかし、“死因”として語られるのは単純な戦闘の結果だけではなく。思わず納得してしまう原因や、意外な理由も。本稿では『葬送のフリーレン』に登場する冒険者たちの意外な死因について考えていく。

 第33話でドワーフのフォル爺が戦闘での冒険者の死因として話したのは”油断”である。たとえ熟練した戦士でも、常に防御を意識できなければ簡単に致命傷を負ってしまう”油断”は、逆手に取れば人にも魔族にも一番効く戦法だという。

 実際、作中に登場したキャラクターの中にも、冒険者ではないが油断により死亡した者がいる。その一人がフリーレンとの戦いで敗れた七崩賢断頭台のアウラだ。アウラが使う魔法は魔力の大きさを秤にかける「服従の天秤」。魔力がより大きい方が相手を服従させ操り人形にできるこの魔法は、彼女にとって必勝法である。アウラはこの魔力比べに五百年の間一度たりとも負けたことがなく、加えてすでに操り人形となった兵士たちを味方につけていたため、数的にも有利な状況であった。しかし、過信が油断の原因となり、フリーレンが魔力を制限していることを見破れず敗北してしまう。

 また、無名の大魔族ソリテールも油断により命を落とした一人である。彼女は黄金郷のマハト編にて、フリーレンと死闘を繰り広げていた。しかし、フェルンの長距離射撃により致命傷を負い、息絶える最期となった。ソリテール自身が「油断と驕りは捕食者故の致命的な欠点。それが原因で多くの魔族が命を落とした」と言っていたにもかかわらず、人間を甘く見たことが油断に繋がり、あっけなく散ることに。魔族だけでなく、人間にも慢心やうぬぼれの心は存在する。力の強い者にほど宿りやすいその心は、多くの魔族や人間が見落としがちな死因といえる。

 一方で、意外な死因には”冬”と”毒”が挙げられる。第23話で魔法都市オイサーストを目指す道中、フリーレンがちらちらと降る雪を見て「魔王軍との戦いで最も多くの人を殺したのは、北側諸国の冬だよ」と語る。北側諸国の冬は猛吹雪で大変厳しく、前を見ることすらままならないため、遭難や体力の低下により命を落とす冒険者が多発するのだろう。いくら優れた冒険者たちでも、天災にはなすすべがないことを物語っている。

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