『こち亀』両津勘吉は超優秀な実業家? 常識にとらわれない斬新すぎるアイデア4選

   警察官でありながら、異常な行動力と先見の明で、さまざまなビジネスに手を出してきた『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(こち亀)の主人公・両津勘吉。両津は発想力、行動力、技術力と、すべてにおいて常人離れした能力を持っているうえ、人脈も豊富。警察官として隠れて実業家となってビジネスを展開していたら、大成功を収めていたかもしれない人物だ。もっとも、やりすぎてしまう傾向もあり、多額の借金を抱えたり、中川や麗子のご厄介になる……というのも、あり得そうな未来だが。

  両津がこれまでに誰も想像していないような新しいものを開発したなかで特に印象的だったものを紹介したい。

究極?の翻訳機器

  翻訳機が商売になることを知った両津。その販売で一儲けしようと考え、語学が堪能な中川と麗子に商品の性能をテストしてもらい、しっかり翻訳されていることを確認した。すると、その場にいた部長から「国際親善パーティーで外国人と会うから貸してほしい」と頼まれる。

  両津はパーティに向けて翻訳機の調整をするが、「こんにちは」と呼びかけているのに「This is a pen」という、ギャグのような答えが返ってくるなど、精度がガタ落ちてしまう。しかし部長から「フグを食べさせてやる」と持ち掛けられていたことから、なんとか成功させなければと、中川と麗子の力を借り、いわば手動で翻訳するというインチキで乗り切ることにした。しかし、二人が優秀すぎたため、英語以外のさまざまな言語も流暢に翻訳してしまったことから、その“翻訳機”はメディアに大きく取り上げられることに。

  インチキ商品であることを言い出せずにいた両津に、資産家から「権利を譲ってほしい」と打診が入り、億単位の金を積まれる。両津は5億という金に目がくらみ、権利を売って逃亡。両津はシンガポールで発見され、詐欺の疑いでしっかり逮捕されている。

一人で空を飛べるマシン

 リュックサックに小型のヘリコプターをつけた「ショルダーコプター」。『ドラえもん』のタケコプターのように、1人で自由に空を飛び回ることができるという夢のような装置だ。

 両津は自らその試作品を作り上げ、「これが成功したら、大々的に売り出す」と宣言。「1号機は100万円かかったが、スポンサーもついて量産すれば半分の値段で売れる」と豪語していた。また安全性についても自動降下しやすい形状に加え、パラシュートも搭載し、自信を持っているようだった。

 ショルダーコプターを完成させた両津は東京を試験飛行へ。しかし、動物園に落下しワニに尻をかまれるなど安全性にほころびが出てしまい、最終的にはバルブが故障し制御不能に。結局、アラスカ山脈のマッキンリー山頂で「オレハリョーツダ」と名乗る男性が発見される……というオチになった。

 安全性や交通上の問題などはひとまず先送りして、ワクワクするアイデアを実現しようとする両津。警察官より発明家に向いているのでは、とも思ってしまう。

ありえない錦鯉

 両津のビジネスアイデアには垣根がない。ペット産業にも挑戦しており、巨大錦鯉が高く売れることを知ると、品種改良のノウハウを徹底的に学び、寮の風呂を水槽にしたうえで、飼育を始める。

 人工配合を繰り返し、手応えを感じると、なんと100トン級の屋内水槽を製造。そこには「両津魚類研究所」の文字が。試行錯誤を繰り返した結果、誕生させたのが、「両津三色」という1メートル近い巨大錦鯉で、彼の狙い通りマスコミに取り上げられ、世界から注文が相次ぐ大ヒットとなった。

 ところが両津三色は、エサ代が高いことや性質が凶暴であることから、捨ててしまう飼い主が続出する。仕方なく両津は販売した鯉の回収を発表。返品が相次ぎ100万匹以上の両津三食で水槽があふれてしまった。それでも両津は鯉に曲芸を教え込み、エサ代を稼ごうとしていた。

 「金儲け」という発想が行きすぎるとどうなるか、という教訓を身を持って教えてくれるのも、両津の特徴といえるだろう。「両津三色」のエピソードでは、近年でさらに問題化しているペット放逐による生態系・環境の破壊についても考えさせられた。

やりすぎの値下げ競争

 葛飾署近辺で、弁当店の価格競争が起きていることを知った両津。自身も稼ぐ好機と見て、「超神田寿司」(超神ノ田寿司)を起こし、すぐさま参戦する。まさに機を見るに敏。こちらは新しいビジネスアイデアというより、両津のフットワークの軽さが表れたエピソードだ。

 両津は当初、値段を調整し、計画通りに利益を出すが、ライバル店が負けじと値下げを断行。負けず嫌いな江戸っ子気質で競争がエスカレートし、最後は「1毛」という単位にまで及んだのだった。

 結局、おにぎりを1日2538個売るという荒業でライバル店に勝利したものの、売り上げはたった「3円25銭4厘7毛」だった。ビジネスチャンスを見出し、すぐさま行動に移したのはさすがだったが、儲けよりも意地を優先し、引き返せないところまで突っ走ってしまった両津。これもある種の教訓話と受け取ることができるだろう。

 両津のアイデアは、それが発想のもとになるか、反面教師的な学びになるかはさておき、新たなビジネスに挑戦したい、と考えている人は、両津が展開してきたビジネスをあらためてチェックしてみるといいかもしれない。

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