『こち亀』両津勘吉はなぜ“ジャンプの顔”なのか? 「週刊少年ジャンプ」55周年記念で新作読切掲載へ

 7月10日発売の「週刊少年ジャンプ」32号に『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(こち亀)の新作読切が掲載されることが発表された。翌週の33号で「ジャンプ」が創刊55周年を迎えることを記念するもので、『こち亀』の掲載は11ヶ月ぶりとなる。

 『こち亀』の特別読切は、2018年7月14日に発売された「ジャンプ」50周年記念号にも掲載されている。少年漫画雑誌のトップランナーである「ジャンプ」には多くの名作が揃っており、連載終了作品で考えても、『ドラゴンボール(Z)』の孫悟空や『北斗の拳』のケンシロウ、『キャプテン翼』の大空翼に『SLAM DUNK』の桜木花道、『キン肉マン』のキン肉スグルに『シティーハンター』の冴羽獠など、“顔”になれるだけの人気と知名度を持つ作品&キャラクターに事欠かない。

 「少年漫画」ということを考えると、ドタバタコメディ&下町人情話の『こち亀』、そして破天荒な警官の両津勘吉より適任の“顔役”がいてもよさそうだが、ジャンプの祭典に“両さん”の姿がないなんて考えられない、という読者は少なくないだろう。

 両さんが「ジャンプの顔」として活躍していることには、いくつか理由がある。第一に、『こち亀』および作者の秋本治氏は、言わずと知れた「ジャンプ」の功労作/功労者だ。1976年から2016年までの40年間、なんと一度の休載も取らずに連載を続け、単行本は全201巻を数える。業界からのリスペクト、40年の間に獲得したファンの数と層の広さはいずれもトップクラスで、「ジャンプ」という大看板を背負うにふさわしい信頼がある。

 そして、『こち亀』は連載こそ終了したものの、現役の作品であること。2016年以降もさまざまな企画を進行しており、また舞台となっている葛飾区亀有では、2024年オープン予定で、本作をテーマにした5階建ての商業施設がつくられるなど、観光資源としても活用されている。絵柄も内容も時代に合わせてアップデートされており、不意に誌面に登場しても単に「懐かしい」という感覚にはなりづらい。友人に再会するような気軽さがあるのも、特別感が出過ぎない「アイコン」として優秀だ(仮に桜木花道が表紙に登場すれば、それは「ジャンプ」の記念号ではなく、『SLAM DUNK』の特別号という印象になってしまうだろう)。

 また、両津勘吉というキャラクター自体の特性もある。大成功と大失敗を繰り返しながら、何事もなかったように日常に帰ってくるタフさと前向きさ。ジャンプ作品のキャラクターたちを“引率”するに相応しいビジュアルで、しかし童心を忘れず、若い読者もワクワクさせるエンタメ人間であり、総じて「景気がいい」イメージを持っているのもいい。いかに人気者でもケンシロウではシリアスすぎるし、大空翼では品行方正&爽やかすぎる。冴羽獠は“遊び心”の方向性が大人すぎるし、孫悟空ほど眩しいキャラクターでは周りが引き立たない……と考えていくと、両さんが持つキャラクター性は「顔役」として収まりがいいのだ。

 最後に、『こち亀』には時流に合わせたテーマをうまく扱う「ドタバタコメディ」と、郷愁を感じさせる「下町人情話」の2軸があることも、状況に応じてバリエーションがつけられるという長所になる。2018年の50周年記念号では、「出演をボイコットする」というメタ的な茶番劇から、仮想通貨・バーチャルコインというホットなテーマでいつものコメディを繰り広げ、今回の55周年に際しては、両津勘吉少年が活躍する人情モノとして人気を博してきた「希望の煙突」シリーズの第3作がセンターカラーで掲載されるという。

 果たしてわれらが両さんは、いつまで“ジャンプの顔”でいてくれるのか。2028年の60周年記念号でも、元気な姿を見せてほしいものだ。

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