【漫画】仕事に疲れたサラリーマン、日々の楽しみは「ぬいぐるみ」との時間 SNS漫画が伝える癒しの多様性
――本作には5万以上のいいねが集まっていますが、これについてはいかがですか?
こやまこいこ(以下、こやま):一番最後に書いたエピソードだったのですが、共感してくださったという感想も多くいただいて、とてもありがたいです。皆さん、同じように大切にされているんだなと。
――意外とぬいぐるみを趣味とされている方は多いのかもしれません。
こやま:「ぬいぐるみ健康法人もふもふ会 ぬいぐるみ病院(R)」に最初取材に行き、数話は自分で描きました。その後にぬいぐるみ病院(R)の利用者の計15名ほどから話を聞いて、私もそれに気付きました。
なかなか積極的にぬいぐるみと自分の関係を話す方はいないと思うので、私自身も驚きとともに楽しい取材でしたね。皆さん自分のぬいぐるみを見せてくださるのですが、その持つ手が優しくて丁寧なんですよ。
その手元が印象的だったので、抱っこしたり、撫でる描写は気を付けて描きました。私自身もぬいぐるみが大好きで、ついつい買ってしまうタイプだと思っていたのですが、愛好している方の姿勢は自分よりも広くて深いなと。
――本作のストーリーをどのように構想したかも教えてください。
こやま:色々な人から聞いたお話をひとつに混ぜていますが、知り合いのご主人でぬいぐるみ好きな方の話がこのお話では特に着想のもとになりました。
そこにもともと好きな、生活のなかで感じる気持ちの変化を掛け合わせて描いています。その方がお話に奥行きが出て、より共感してもらえるかなと思うので。
――チキン南蛮のお弁当を買うシーンもリアリティがありました。
こやま:チキン南蛮は単純に自分が好きなんですよ(笑)。お弁当を登場させるならそれかなと思ったんです。登場人物の好きなものや持っているこだわりなどを多く描けたらとは考えていました。
――登場人物の機微と無表情なぬいぐるみの対比が物語を引き立てているように感じます。
こやま:無表情であるからこそ、人間のどんな気持ちをも受け止めてくれるのかなと思います。自分と一緒に笑っているようにも、悲しんでいるようにも見えればいいなと考えながら描いていましたね。
――またこやまさんは以前、小山宙哉さんとの夫婦対談(約6年前)では、「イラストと比べてストーリー漫画の制作は難しい」というお話をされていました。現在はいかがですか?
こやま:まだまだだなとは思います。ただ自分の世界観を表現できるので、ワンカットのイラストとはまた違った自由さがあり、楽しみながら描けるようになりました。この先も漫画を描いていきたいですね。
――今後どんな作品を描いていきたいですか?
こやま:もともとエッセイなどの読書が好きなので、本にまつわる物語を描けたらいいなと思います。年齢とともに気持ちや思考も変わっていくので、その時に感じたことを漫画に落とし込めたら嬉しいです。
エッセイや誰かの日常を覗けるような作品が大好きなので、私も気持ちや情景を残していけたら。大冒険ものも好きですが、私には描けない(笑)。だから1日の終わりに少し読んで、閉じて寝るという漫画が描けたらと。そのような作品に私は力をもらってきたので。